議員が自治体職員に「心理的圧力」 根深い政党機関紙強制勧誘

パワハラ防止へ調査の声 3~8割実感

全国自治体において、議員による職員へのハラスメントを防止しようとする動きが広がっている。背景として、議員は職員に対して優位な立場に立つことが多く、その言動がパワハラにつながりやすい構造がある。特に深刻な問題が「政党機関紙の勧誘」だ。職員アンケートを実施した自治体の調査結果によると、「議員に勧誘され、購読しなければならないという圧力を感じた」と答えた職員の割合が、少ない自治体でも3割、多い自治体では8割に上っていることが分かった。庁舎内ハラスメント防止へ実態調査と是正を求める声が高まっている。(しんぶん赤旗問題取材班)

地方自治体の庁舎内における政党機関紙の強制購読問題が全国的に広がりを見せる契機となったのは、神奈川県鎌倉市が2014年度から日本共産党機関紙「しんぶん赤旗」をはじめとした政党機関紙の庁舎内での購読勧誘全面禁止を打ち出したことが大きい。それまで、共産党議員が幹部職員の昇進などの機会に、議員の立場を利用して購読を勧誘することが多かったが、そうしたことを問題視するのは“タブー”とされてきた。

しかし、鎌倉市に続き、同県藤沢市、茅ケ崎市、東京都狛江市、兵庫県加古川市などの議会で、政党機関紙の市庁舎内での勧誘・配達・集金を行わないよう是正が図られ、同様の趣旨の管理規定を設ける自治体が全国に広がっていった。パワハラに対する国民の批判意識も強まり、20年6月には地方公務員をも含め保護の対象とするパワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)が施行された。

ところが、本紙が5月から6月にかけて行った「全国地方自治体アンケート調査」(167自治体が回答、6月23日付)で明らかになったように、隠れた形での議員による職員への半ば強制的なパワハラ勧誘は今も数多くの自治体で続けられている。「断りを入れてもしつこく勧誘し圧力を感じて購入せざるを得なかった」(秋田県A町)といった職員からの悲痛な声が相次いだ。しかも、行政としては「禁止したいが具体策を持っていない」と返答した自治体が多かった。

今年に入って顕著なのは、政党機関紙の購読勧誘・集金などでパワハラ防止を求める陳情が全国的に多数出され、18に上る地方議会で採択・趣旨了承されたことだ。その中でも、兵庫県高砂市、北海道千歳市(共に3月)、神奈川県南足柄市(6月)では、陳情文の求めに応じ、審議の前に管理職へのアンケート調査を実施したことで、議会では正確な実態把握に基づく審議を行うことができ、適切な判断をすることができた。

アンケート調査を巡っては、神奈川県川崎市の行った調査(03年3月)が「ずさんな回収方法により匿名性が侵害される可能性があった」と共産党議員らが主張し、高等裁判所で争った事例を挙げて不当性を訴えてきた。しかし、最近の調査は任意回答や無記名で電子メールグループを通じて行われているため匿名性が高く、共産党議員の主張に根拠がなくなっている。

南足柄市の6月定例議会に陳情を提出した男性(61)は「市側が事前に庁内の実態調査を行ってくれていたことで審議に影響したと思う。強制購読勧誘に困っている職員に寄り添うことが大切だと考えている」と語っている。

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