専門から一般まで広く目配り
昭和史の本の森へ案内
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昭和史については、実に夥(おびただ)しい本が書かれ、なお出版が続いている。未曽有の大戦を経験した激動の時代であり、幾つもの重要テーマがある。それだけに、どんな本を読んだらいいのか、迷う人も多いだろう。
平山周吉氏の新著『昭和史百冊』(草思社)は、そんな人に格好の読書案内の書である。
100冊とあるが、実際は400冊に上る。著者の長年にわたる読書の蓄積を基にしたものだが、それにしてもよくもこんなにたくさんの本を精読したものだと感心する。
「日本はなぜ開戦したのか」などの章ごとに、著者が必読と考える「定本コーナー」に、ここ10年間、月刊誌や週刊誌に執筆してきた書評を合わせて案内する。
読書案内は、何より本の選択が重要だ。著者の基本姿勢は、左右のイデオロギーやこれまでの定説にとらわれず、昭和史の真相とその歴史的な意味に迫ろうというもの。定本の中には、有名な本が抜けていることも承知の上で、自分の目を信じて選んだという。
大戦とそれを境にした大きな変化を扱ったものが中心となるのは当然としても、専門研究者からジャーナリスト、日曜歴史家の本まで幅広く目配りし、読みやすい本が選ばれている。
歴史の書き換えは昭和でも進んでいるが、書評コーナーではそういった最近の注目本が網羅されている。
田島道治『昭和天皇拝謁記――初代宮内庁長官田島道治の記録・第一巻』(岩波書店)などはその代表で、「昭和史の書き換えは本書の完結と同時に必至だろう」とまで述べている。司馬遼太郎賞を受賞した片山杜秀『未完のファシズム――「持たざる国」日本の運命』(新潮選書)は2012年刊行の比較的新しい本だが、定本コーナーに入っている。
その選択に異議なし!である。
もちろん、本書を読んで何かすっきりとした昭和史の展望が得られるというものではないし、著者の意図でもない。中には森の中の迷路に入り込んだと感じる人、あるいはそれなりの展望が見えてくるという読者もいるだろう。
いずれにしても、膨大な昭和史本の中で、それぞれのテーマや問題意識に従って、どの本を読んでおくべきかが、明らかになるのはありがたいことだ。
それがさらなる昭和史の真実に迫るステップとなることを著者は望んでいる。
(特別編集委員・藤橋進)






