【連載】安倍元首相暗殺から1年 闇の中の真相・テロ容認の危機(3)テロ容認風潮が生む模倣犯

旧統一教会叩きで本質見失う

岸田首相に爆弾が投げ込まれた和歌 山市雑賀崎漁港の現場。爆弾は左側 で爆発し、40㍍離れたコンテナ(右 奥)に穴を開けた(特別取材班撮影)

(1) 消えない単独犯への疑念

(2)教団への恨みを反安倍へ

「民主主義の根幹である選挙が行われている中で起きた卑劣な蛮行で、決して許すことはできない」

安倍晋三元首相が、選挙遊説中に殺害されたことを知らされ、岸田文雄首相はこう語った。野党も含め政治家たちは、「民主主義への挑戦」などと山上徹也被告の犯行を非難した。しかし、テレビのワイドショーをはじめマスコミが世界平和統一家庭連合(旧統一教会)叩(たた)き一色になると、その声は聞かれなくなった。

報道の過熱で山上被告への同情論が集まり、左翼勢力からは被告を英雄視する者まで現れた。さらには現役大学教授がとんでもない発言をする。

作家で法政大学教授の島田雅彦氏は、ユーチューブ動画で、「こんなこと言うとまた顰蹙(ひんしゅく)を買うかもしれないけれど、今まで何ら一矢を報いることができなかったリベラル市民として言えばね、せめて暗殺が成功して良かったな」と発言。人々の怒りでネットは炎上した。

こんな発言が、いくら「サヨク」を売り物にするとはいえ、現役の大学教授の口から出ること自体驚きだが、このテロ肯定発言に対して法政大学は何ら処分を行っていない。ここまでテロ容認の風潮が日本を覆っている。

そして恐れていたことが起こった。

事件から9カ月余りの4月15日、和歌山市の雑賀崎(さいかざき)漁港に統一地方選の遊説に訪れた岸田首相に鉄パイプ爆弾が投じられる暗殺未遂事件が起きる。幸い岸田首相に怪我(けが)はなかったが、爆発現場から40㍍離れたコンテナに穴を開ける威力を持つものだった。現行犯逮捕された木村隆二容疑者(24)は、年齢を理由に選挙に立候補できないのは憲法違反として神戸地裁に提訴していた。棄却された大阪高裁への控訴に際しては、「既存政治家は統一教会の組織票で当選している」などと主張し、安倍氏の国葬を閣議決定だけで行われたことも批判している。

筒状の物体が投げ込まれ、身をすくめる岸田文雄首相(中央)= 15日午前、和歌山市(目撃者提供)(一部画像処理しています)

容疑者は黙秘を続けているが、自家製とみられる爆弾で選挙遊説中の首相を襲うなど、山上被告の犯行を真似(まね)た模倣犯であることは明らかだ。テロで社会を大きく変え、しかも世間の同情を集め、反安倍勢力からは英雄視される山上被告の“成功”に刺激された可能性は極めて高い。

しかし不思議なことには、模倣犯の可能性について、日本のマスコミはほとんど言及しない。安倍氏暗殺事件の一連の報道がテロ容認の風潮を生み、模倣犯を生んだこと、責任の一半が自分たちにあることを自覚しているからだろう。

事件発生時、現場にいたという中年の漁師に当日の様子を聞いた。別れ際、漁師は「今の若い人は何をするか分からない」とポツリと言った。

「生きづらさ」を感じている若者が増える中、山上被告の“成功”例は、今後、次々と「ローンオフェンダー」の模倣犯を生み、テロの連鎖という最悪の事態を生じかねない。政治家やマスコミが安倍元首相暗殺事件の本質をを歪(ゆが)めたことで、日本の民主主義と治安は根底から崩れようとしている。

(世界日報特別取材班)

【連載】安倍元首相暗殺から1年 闇の中の真相・テロ容認の危機(4)慰霊碑、市民の声反映されず

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