発砲後、現場を去る不審な女性
警察は安倍氏の体には弾が2発命中したと発表したが、左上腕部から入って、左右鎖骨下動脈を損傷させた致命弾が見つかっていないことを認めている。なぜ致命弾がみつからないのか。これも大きな謎だ。
致命弾を放ったスナイパー以外にも、現場で指示役や連絡役のような者がいた可能性は十分考えられる。銃撃の瞬間とその前後を撮影した動画をよく見てみると実際、不審な動きをする人物が何人か目撃される。
最も不可解な動きをしているのは、安倍氏が演説を始める直前に、足早に山上被告に近づき、左横に立った白いヘッドフォンを付けた若い女性だ。この女性、安倍氏が演説を始めると演説を聞くでもなく盛んにスマートフォンを操作しだす。そのうち、山上被告が車道に出るためこの女性の前を通って移動すると、その方に目を向ける。そして向かい側のサンワシティ西大寺ビルの上層部に目をやる。その直後、山上被告の1回目のすさまじい音を立てた発砲が起きる。
ところが不思議なことに、その瞬間、女性は爆発音に驚くのでもなく、それを横目に、そそくさとそこから離れようとする。数歩歩んだところで、警護に走り出した警官とぶつかって転倒している。高田氏もこの女性の行動に不審を抱き、もし心当たりがあるなら名乗り出てほしいとSNSで発信しているが、応答はないという。
SNS上で注目されたこの女性は、視聴者からの提供で民放テレビに放送されたものでも確認できる。協力者の存在を匂わせるこれら動画は、事件発表から間もない段階で表に出ている。しかし、奈良県警は早い段階から、山上被告の単独犯の線で捜査を進めてきたようにみえる。少なくとも旧統一教会への恨みが動機という被告の供述をリークすることで、マスコミや人々の関心をその方向に導いた。
来年年明け以降始まるといわれる公判で、致命弾が見つからないことを理由に、被告側が無罪を主張することはなさそうだ。容疑者の量刑が裁判の焦点になるとみられるが、事件の全容の解明、さまざまな矛盾・不審点の合理的な説明がない限り、国民を納得させることはできないだろう。