話題作を考古学者が大検証 高まる「土偶の正体」への関心

竹倉史人著『土偶を読む』
望月昭秀編『土偶を読むを読む』

望月昭秀(縄文ZINE)編『土偶を読むを読む』(左)と竹倉史人著『土偶を読む』
望月昭秀(縄文ZINE)編『土偶を読むを読む』(左)と竹倉史人著『土偶を読む』

ゴーグル(遮光器)を着けたような目、宇宙人のような三角頭。縄文時代の土偶は、なぜこんな不思議な形をしているのか――。人類学者の竹倉史人著『土偶を読む』(2021年、晶文社)は、この謎を解明した画期的な本として話題になり、サントリー学芸賞を受賞した。

しかし肝心の考古学界はどうみているのか。この春出版された望月昭秀編『土偶を読むを読む』(文学通信)は、竹倉説を考古学専門家らが徹底検証し、論拠に乏しいと厳しい評価を下している。

竹倉氏の説は、一言でいえば、「土偶は食用植物と貝類をかたどっている」というものだ。「ハート型土偶」はオニグルミ、「山形土偶」はハマグリ、「遮光器土偶」はサトイモなど、それぞれの精霊を象(かたど)ったものだという。

竹倉氏の方法は、まず見た目の類似(イコノロジー)から入る。例えば遮光器土偶の腕や足をサトイモに見立てる。

さらにその植物の分布や食用にされていたかどうかなど、考古学的な研究を基に、検証するのである。

ほぼすべての文化には植物霊祭祀(さいし)の習慣があるという、人類学者フレイザーの『金枝篇』の説が基にあるようだ。しかしなぜ貝類が含まれるのか。

これに対し著者は、そもそも縄文人には「植物」とか「貝類」といった観念はなかったとし、「海は水のある森であり、森は水のない海なのである」という。縄文人の思考に限りなく近づくというのも竹倉氏の考察の特長であり、魅力だ。

これに対し『土偶を読むを読む』では、竹倉氏が取り上げた6タイプの土偶それぞれを、①イコノロジー②編年・類例③植生や栽培の3点から検証し、極めて厳しい評価を下している。

特に、あるタイプの土偶がどのように変化していったかという編年・類例についての考古学的な成果が、ほとんど参照されていないと批判している。

さらに、当該植物の分布がそれを象った土偶の出土地と一致しない点など、より厳密な検討結果が明らかにされている。

同書は、そういった検証と共に、土偶研究史や縄文研究の現状について紹介している。それらを読むと、土偶研究の地道で基礎的な成果の積み重ねに驚かされる。そういう点で、土偶研究の本当の成果は、これからなのかもしれない。

しかし竹倉氏の研究が、土偶の正体解明に大きな一石を投じ、考古学ファンや一般読者の関心を一気に高めたことは疑いない。検証本に対し、竹倉氏がどう反論するか楽しみである。

(特別編集委員・藤橋 進)

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