中国警察当局による逮捕 モンゴル国内で5件目 来日人権団体

国会議員らに向け講演した南モンゴル人権情報センターの トゴチョグ・エンフバト代表(左)=8日午後、東京都千代田区(村松澄恵撮影)

南モンゴル(中国・内モンゴル自治区)の作家が5月にモンゴル国内で中国警察当局者らにより拘束・強制送還されたという報道などを受け8日、東京・永田町の参議院議員会館で勉強会が行われた。報道の情報源で米国を拠点に南モンゴルの人権問題を啓蒙(けいもう)している「南モンゴル人権情報センター」のトゴチョグ・エンフバト代表らが来日し、中国政府が隣国モンゴルに圧力をかけ、南モンゴルを弾圧している実態を告発した。

強制送還されたのは南モンゴルの作家・歴史家であるボルジギン・ラムジャブ氏。2019年に『中国の文化大革命』と題した書籍を執筆したとして中国で2年服役した後、当局監視下にあった今年3月にモンゴルに逃れ、5月3日に中国の警察当局者らに拘束されたとされる。エンフバト氏は、ラムジャブ氏の妻子も「外界との連絡を絶った」と主張。南モンゴル出身者がモンゴルに送り込まれた中国の警察に拘束された同様のケースが確認されたのは、09年以降5件目だという。

エンフバト氏は中国政府がモンゴル政府に圧力をかけ、逮捕への協力を仰いだと強調。「モンゴルは小さな国なのでロシアや中国など大国からの圧力に耐えられない。生き残らねばならないのは分かるが、独立国家のモンゴルがこんな状況であるのは問題だ」と述べた。中国は「南モンゴルを消し去ろうとしている」として、日本の報道機関など世論の理解を求めた。

共に来日した同センターのホタラ・ドガルジャブ氏は、「南モンゴルで中国に批判的な人々がモンゴルに行き強制送還されることは以前からあったが、最近はモンゴル政府が中国と協力して自国民を逮捕するケースが起きている」と指摘。モンゴル国民でありながら「中国に対するスパイ活動」の罪で昨年逮捕され、懲役10年が確定しているチョローンドルジ・ムンヘバヤル氏について報告した。

また、世界各国で存在が報じられている中国の「海外警察」がモンゴルの首都ウランバートルに存在するかについて詳細は不明とした上で、「中国政府はすでにモンゴル政府に十分に影響を与えており、『警察署』を置く必要すらないのではないか」と述べた。

世界で唯一南モンゴルの名称を冠した自民党の「南モンゴルを支援する議員連盟」(高市早苗会長)は昨年10月、ムンヘバヤル氏の判決に際し「重大な関心を持って注視する」とした声明文を出している。

勉強会には自民党の英利アルフィヤ衆議院議員、原田義昭元環境大臣らが参加し、あいさつした。

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