
主要国首脳会議(G7サミット)は19日、広島市の平和記念公園で岸田文雄首相と裕子夫人がG7各国の首脳らを出迎え、開幕した。G7首脳は、広島平和記念資料館(原爆資料館)を視察し、被爆者から直接話を聞いた。G7首脳がそろって資料館を訪れるのは初めて。(広島サミット取材班)
首相は昨年5月、自身の地元でもある広島市でのサミット開催が決定して以降、G7首脳による平和記念公園訪問の調整を進めてきた。ウクライナ侵攻したロシアが核兵器を使用するとの危機感が国際社会に広がり、各首脳の理解が得やすくなった背景がある。
資料館では、被爆後に白血病を発症し、回復を祈って折り鶴を作り続けたものの、12歳で亡くなった佐々木禎子さんのエピソードが紹介され、首相も展示品について首脳らに説明したという。首脳らは、被爆者の小倉桂子さんと対話した後、芳名禄に記帳。資料館を出ると、原爆慰霊碑に献花し、原爆犠牲者を追悼。広島市の松井一実市長から原爆慰霊碑の碑文や原爆ドームについて説明も受けた。
資料館は1945年8月6日の原爆投下がもたらした惨状を後世に伝えるため、55年に開館した。米大統領が資料館を訪れたのは、オバマ大統領以来、7年ぶり。当時は10分間の滞在にとどまり、原爆投下の是非には言及せず謝罪もしなかった。今回はそれを大きく上回る約40分間の滞在だったが、資料館内の様子は非公開だった。ただ、米国内では「原爆投下が第2次世界大戦終結を早めた」とする主張が根強く、見学する展示物を巡っては、「ぎりぎりまで調整した」(日本政府関係者)。
米国のバイデン大統領は、広島に向かって出発する前、平和記念公園では「意思表示はしない」と述べ、他のG7首脳と共に「歴史と、広島が地元である岸田文雄首相への敬意を示す」と説明していた。
松井市長は、「バイデン大統領のほか、核保有国であるイギリスとフランスの現首脳も初めての訪問となったのは歴史的に深い1日になったと思う。核兵器をなくす以外に根本的な解決はないという認識を共有してほしい」と述べ、「核なき世界」実現に期待を込めた。
サミット最終日の21日には、インドや韓国など招待された8カ国の首脳とウクライナのゼレンスキー大統領らが平和記念公園を訪れる予定だ。