「女性専用トイレが消えてしまう!」――。女性たちがこんな悲鳴を上げている。「性の多様性」への理解を深めるため、自治体などが性別に関係なく使える「ジェンダーレストイレ」を増やし、その反動で女性専用トイレが減っているからだ。そこにLGBT理解増進法が成立すれば、ジェンダーレストイレ設置が加速する可能性がある。女性専用トイレが消えるというのは大げさにしろ、「女性が性被害に遭う」という懸念がさらに高まるのは必至だ。(森田清策)
「新宿歌舞伎町のホテル2階のトイレがジェンダーレストイレとして造られた。友人女性が設備が心配で、実際に行った。女性用個室に入ったら、ドアノブを外からガチャガチャされて怖くて、用を足さずに出たそうです」
今月1日、LGBT(性的少数者)当事者グループなど4団体が都内で開いたLGBT理解増進法案に反対する記者会見を行った。その一つ、女性の権利擁護を目指す「女性スペースを守る会」共同代表の森谷みのりさんはこう語って、ジェンダーレストイレへの不安を訴えた。
歌舞伎町のホテルというのは、今年4月開業した娯楽とホテルの複合施設東急歌舞伎町タワー(地上48階、地下5階、ホテルの開業は19日)のこと。早速、筆者も行ってみた。
エスカレーターを使って2階に上がると、巨大な金魚ちょうちん(山口県柳井市の民芸品)が目に飛び込んできた。
この階は飲食店が集まるエリア。利用客は断然、女性が多い。そこに設置されたのがジェンダーレストイレだ。
トイレ入り口正面には、人の形をした白色のピクトグラムがあるが、初めての利用者には意味が分かりにくい。そこで、左が男性用(小便用)、右が男性用・女性用・多目的・誰でもトイレが集合したスペースであることが分かるように、青と赤で色分けした紙の案内が貼ってあった。要するに、右がジェンダーレストイレだ。筆者は右に向かった。
男女が一緒に使う手洗い場を中心に、12の個室が並んでいた。女性用8、男性用2,男女共用2だ。利用者は女性が多く、その前で男性用を出入りすることには違和感を覚える。化粧直しも行う女性ならなおさらではないか、と思っていると、「混乱するわね」という女性の声が聞こえてきた。
このトイレについては、歌舞伎町という治安の悪い土地柄もあって、ネット上に「女性にとっては危険」という批判が殺到した。冒頭にあるようなドアノブを外からガチャガチャしたのは男性でなかったのかもしれないが、女性にとっては恐怖体験だったことには違いない。また、小便用とはいえ、男性専用スペースがあるのに、女性専用スペースがないことに対する不公平感を抱くのも当然だろう。
これに対して、施設側も反応。ホームページ上で「お客様にはご心配をおかけして申し訳ございません」としながら、「国連の持続可能な開発目標(SDGs)の理念でもある『誰一人取り残さない』ことに配慮し、新宿歌舞伎町の多様性を容認する街づくりから、設置」したと強調。防犯対策として①警備員による巡回②防犯カメラによる共用部の監視③夜間の電子錠によるロックなどの対策を実施している、と説明に追われた。
だが、警備員の巡回などで、女性の不安は解消されるのか。
また、国連が掲げるのはジェンダーレスではなく「ジェンダー平等」。それは女性専用トイレを設置しても達成できるはず、との疑問は残った。