世界で異常気象が多発し“荒れる地球”を鎮めるため、世界規模の温暖化対策の推進が喫緊の課題である。
札幌で開いた先進7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合は、2035年までに19年比で60%削減することや、車から排出される二酸化炭素(CO2)を35年までに00年比で半減することで一致した。
しかし、温暖化対策の象徴的な対策である電気自動車(EV)など走行中に温室効果ガスを排出しない「ゼロエミッション車」の導入目標は設定できなかった。
また、化石燃料の「段階的廃止」でも方針は盛り込めたものの、石炭火力の活用などでも各国の事情を反映して対立し設定できなかった。
特に日本はEV開発の遅れや石炭を含め火力発電に頼らざるを得ない状況などから、会合では十分なリーダーシップを発揮できなかったとの批判もある。
ただ、温暖化対策は先進国だけではなく、途上国を含めた全地球的な課題であり、各国が取り組みやすいことが何よりである。西村康稔経済産業相が会合後の会見で「各国にはそれぞれのエネルギーと経済の事情があり、脱炭素化の道筋は多様であると認めながら、共通のゴールを目指すことを確認できた」と述べたが、その意義は実に大きいと言える。
とりわけ、例えば、燃焼時にCO2を排出しないアンモニアを石炭に混ぜる混焼を進める技術は、稼働年数の短い石炭火力を抱えるアジア地域には有効である。日本はこの混焼技術を展開できるベストポジション(好位置)にいる。これら地域の脱炭素化に貢献でき、現にアジア地域全体で支援する。まだ開発途上の技術だが、多様な道筋の一つとして声明・宣言に盛り込めれば、開発を積極的に進めアジアの温暖化防止に実を挙げることができよう。
今回のサミットでホットな話題として浮上しているのが、AI(人工知能)のルール形成である。政府は11日に「AI戦略会議の初会合を首相官邸で開き、岸田文雄首相は「AIはグローバルな議題で、G7議長国としてリーダーシップを発揮することが求められる」と語り、国際的なルール形成を主導することに意欲を示した。
AIを巡っては、対話型AI「チャットGPT」の誕生など急速な技術革新が進んでいるが、誤情報の拡散や著作権侵害などのリスクが指摘されている。
先の会合で首相は「AIには経済社会を前向きに変えるポテンシャル(可能性)とリスクがあり、両者に適切に対応していくことが大切だ」と強調し、戦略会議を支える関係省庁の「AI戦略チーム」に検討の加速を指示した。
AIの利用と規制は欧州や米国でも議論が進んでいて、日本はやや出遅れ感が否めない。日本は政府や地方自治体、民間企業で事務作業の効率化といった利点から、利用先行で進んだきらいがある。
とはいえ、今回、日本が議長国であることは一つの幸運と言える。首相はサミットの主要議題の一つに据えることにしており、あとは国際ルール形成へ議論をまとめられるかである。
(編集委員・床井明男)