トップ国内南西諸島周辺の緊迫続く 宮古島沖 陸自ヘリ事故

南西諸島周辺の緊迫続く 宮古島沖 陸自ヘリ事故

中国軍の動き活発化

仲村覚氏 「抑止力立て直しが急務」

レーダーから機影が消える直前、池間島の東岸に沿って北上する陸自ヘリコプターとみられる機体=6日午後3時54分、沖縄県宮古島市(スティーヴ・クリスティーンさん提供)
捜索海域で発見された漂流物(第11管区海上保安本部提供)

沖縄県の宮古島周辺で陸上自衛隊の多用途ヘリコプター「UH60JA」が行方不明となった事故は依然、捜索活動が続いている。そんな中の8日、中国は台湾周辺で軍事演習を開始。その一方で、米軍のF16戦闘機2機が宮古島市の下地島空港に緊急着陸するなど、南西諸島周辺は緊迫した状況が続いている。(沖縄支局・川瀬裕也)

米軍機が下地島空港緊急着陸 玉城知事は使用許可

6日午後4時ごろ、宮古島周辺で陸自第8師団のトップ坂本雄一師団長ら10人が搭乗したヘリコプターが消息を絶った事故は、11日現在も自衛隊や海上保安庁などによる懸命な捜索活動が続けられており、これまでに機体の一部とみられるローター(回転翼)、燃料タンク、救命ボート、隊員のヘルメットなどが発見されている。

下地島空港に緊急着陸した米軍機=8日午後、沖縄県宮古島市

6日夜、森下泰臣陸上幕僚長は記者会見で、「国民に心配を掛け申し訳ない」と謝罪し、「これまで発見された器材らしきものの状況から総合的に判断し、航空事故と概定した」と発表した。

ヘリは事故の10日前に定期点検を終えたばかりだったことや、レーダーから機影が消える2分前まで、空港管制と正常に応答していたことも判明しており、突発的なトラブルが起きたと見られている。

元陸自隊員で、ヘリコプターの整備などに携わったことがある、日本沖縄政策研究フォーラムの仲村覚理事長は、「(同ヘリは)エンジンや油圧、電気系統などで何かしらのトラブルが起きても、代替手段で不時着できるように設計されている。パイロットも2人体制のため、体不調なども考えづらい」と指摘。「事故原因はまったく見当がつかない」と話す。

一方、南西諸島周辺海域における中国軍の動向が活発化している。防衛省は6日、事故前日に中国海軍空母の「山東」が波照間島南方の太平洋を初航行するのを確認したと発表した。また中国軍は8日、台湾の蔡英文総統の訪米への対抗措置として台湾周辺で3日間にわたり軍事演習を実施すると発表。台湾国防部(国防省に相当)によると、8日、延べ71機の中国軍機と軍艦9隻が台湾海峡周辺で活動し、一部が台湾海峡の中間線を越えたり、台湾が設定する防空識別圏(ADIZ)に侵入したといい、緊迫した状況が続いている。

こうした状況を踏まえ仲村氏は、事故に遭った坂本師団長率いる陸自第8師団は、南西諸島防衛において重要な役割を果たす部隊であるとして、「国防の隙をつくらないためにも、自衛隊の抑止力立て直しが急務だ」と語った。

また8日には、宮古島市の下地島空港に米軍のF16戦闘機2機が緊急着陸した。沖縄防衛局によると2機のうち1機が同島周辺でエンジントラブルを起こしたといい、僚機と共に着陸。米軍機の同空港使用は2006年以来16年ぶりだ。

同空港については今年1月末、米軍が人道支援や災害救援を目的とした習熟飛行訓練のため、県に「空港使用届書」を提出したが、県が(同空港を)民間機の使用に限定することで過去に国と合意した「屋良覚書」や「西銘確認書」を根拠に自粛要請を出し、訓練が中止された経緯がある。

ただ、今回の緊急着陸について、玉城デニー知事は10日、報道陣に対して「今回は緊急事態に対応するためなので使用を許可している。県から特に自粛なども求めていない」としている。

ヘリ事故を巡っては、インターネット上などで、一連の中国軍の動向との関連を疑う声が上がっている。これについて7日の衆議院安全保障委員会で、玄葉光一郎議員(立憲民主党)が、「念のため」と前置きした上で、「中国の艦艇が(ヘリ事故の)直前に沖縄―宮古間を通過したが、関連性は絶対にないと断定して良いか」と質問。これに対し浜田靖一防衛相は「そういったことは今のところ入っていない」と否定している。

先月、陸自石垣駐屯地が新たに開設され、南西諸島防衛の強化と台湾有事への備えが整いつつある中で発生した今回のヘリ事故。自衛隊の威信を懸けて、一刻も早い隊員の発見と機体の回収、原因究明が求められる。

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