北海道知事選 与野党対決 現職に強み 【連載】統一地方選2023 現場を行く(3)

4月1日、旭川市内で候補者の演説を聞く市民

前回に続き事実上の与野党対決となった。自民・公明両党が推薦し、地域政党「新党大地」が支持する現職の鈴木直道に対し、立憲民主が推薦、国民、社民、共産が支持する池田真紀が挑む。

選挙戦の後半に入った1日、鈴木は北海道第2の都市・旭川市で遊説した。

「人口減少、物価高。地域を取り巻く環境は厳しいものがある。しかし、北海道のポテンシャルはとても高い。それを最大限生かして地方の経済基盤を足腰の強いものにして地方の活力を上げていく」

2期目の当選を目指す鈴木は知名度を生かして、先行する。タレント張りの甘いマスクと若さに加え、4年間の道政運営の強みを生かして話題性に事欠かない。

3年前に新型コロナウイルス感染が拡大した際には、国に先駆けて緊急事態宣言を打ち出すなど、リーダーシップを発揮。最近では札幌市の隣町、北広島市に日本ハムファイターズの本拠地・新球場「エスコンフィールド」が完成、3月30日に開業セレモニーが行われたばかりだ。

さらに3月には、国策半導体企業ラピダスの最先端新工場の千歳市誘致が決定。同社社長の表敬訪問を受けた知事はメディアに大きく取り上げられた。とりわけ、ラピダスの工場誘致は道内過去最大の5兆円規模の投資が見込まれる。鈴木は遊説の中で工場誘致の成果を強調し、「持っている男」を印象付けている。

年明け早々の1月上旬に満を持して出馬表明した鈴木に対し、池田はほぼ1カ月遅れの2月4日、告示の2カ月前までずれ込んだ。

立民陣営で候補者が決まらず、同党道連代表の逢坂誠二が道ゆかりの官僚や国会議員経験者に声掛け要請したものの次々に断られ、最後の最後に「お鉢が回ってきた」のが池田だった。決意を固める後押しをしたのは立民重鎮で元知事の故横路孝弘。「ぜひ知事選に出て全道を回ってほしい」と念を押されたという。

「現職の支持率は80%で大変な戦いになると思うが、私は残りの20%の道民の声に耳を傾け、政策実現に臨みたい」。出馬会見で池田は悲愴(ひそう)な決意を述べた。池田は2017年の衆院選に出馬し、比例区で復活当選したものの、21年の衆院選では落選している。

「差別や偏見のない社会の実現、誰一人置いてきぼりにしない道政を実現する。人権と福祉を柱に、人口減少が進む中、インフラの基盤となる鉄道を含めた交通体系の充実を図っていきたい」

こうした政策を訴える池田は、コロナ禍について、「大胆な政策実現ができずに終わっている。大きな失政もなかったが、何もしていない」と、鈴木道政を手厳しく批判する。ただ、準備不足もあって、挑戦者の、地べたを這(は)いつくばるような戦いができていない。

今回の道知事選は、鈴木道政への審判であるのと同時に、立民に代表される弱体化する野党への失望の度合いを示すバロメーターになる可能性がある。(敬称略)

(統一地方選取材班)

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