台湾強化進める米方針と逆行
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玉城デニー沖縄県知事は6日から11日までの日程で米ワシントンを訪問した。国務省などを訪れ、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設反対などを掲げ「対話による平和外交」を訴えた。中国の脅威に備え台湾の防衛力強化を図る米政府と真逆の主張を続ける玉城氏に対し、現地では冷遇とも取れる動きが目立った。(沖縄支局・川瀬裕也)
歴代知事と比べ冷遇目立つ
玉城知事は6日、就任後3度目(2019年以来)となる米国訪問に出発した。出発前、玉城氏は、今年1月に開かれた日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、南西諸島において自衛隊と米軍が演習などで空港・港湾の共同使用を推進するとした合意について、「県は納得していない。まずは平和外交に日米同盟を向けるべきだ」と日米抑止力強化の否定とも取れる発言をし、基地反対を訴える姿勢を改めて示した。
威勢よく飛び立った玉城氏だったが、米国での風当たりは芳しくなかった。訪米活動初日の8日(現地時間7日)、国務省を訪れた玉城氏は施設の裏口に案内され入館したという。歴代県知事の訪米時の対応と比べると、「冷遇」と取れる内容だ。
その原因は、玉城氏の訴える「対話による平和外交」と米政府の方針があまりにも逆行しているためという見方が有力だ。米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)は今年1月、中国が台湾に軍事侵攻した場合のシナリオをシミュレーションし、被害想定を発表した。これを基に、米連邦議会では台湾の防衛力の向上を支援する方針で議論が進んでいる。
実際に今月1日、米政府は台湾に対しF16戦闘機に搭載するミサイルや関連機器などを売却することを承認している。金額は、合わせて6億1900万㌦(約840億円)に上る。このような動きの中で、抑止力向上を妨げる玉城氏の訪米は、米政府にとって歓迎し難いものであったことは明らかだ。
さらに、基地問題を協議するため沖縄県知事として初めて訪米した西銘順治知事から仲井真弘多知事までは、面談相手として国務次官や国防長官など、各省トップが対応してきたが、翁長雄志知事のころから、国務省日本部長や国防総省日本部長代行などが対応するにとどまっている。
沖縄の地元紙は玉城氏の訪米を、「独自外交への一歩」と評価する論陣を張っているが、日本政府と対立する独自の主張を続けた結果、翁長県政のころから、米政府との距離はむしろ大きくなってきていると言わざるを得ない。今回の玉城氏の「裏口入館」が、米国での沖縄の発言力低下を裏付けた形となった。