【連載】安倍元首相暗殺の闇―第3部 テロ直視せぬ危うさ(3)

五・一五事件後の展開と酷似

安倍晋三元首相を手製銃で襲撃した山上徹也被告(42)に対しては、まだ公判も始まっていないのに、山上被告の減刑を求める署名サイトが立ち上げられ、1万件を超える署名が寄せられた。拘留中の被告の元には、現金を含むさまざまな差し入れも行われているという。

【連載】安倍元首相暗殺の闇 第3部 テロ直視せぬ危うさ(1)

【連載】安倍元首相暗殺の闇 第3部 テロ直視せぬ危うさ(2)

五・一五事件の海軍側の第1回公判の様子(昭和8年)

奈良県警のリークによって、母親が入信している世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への恨みが動機と報じられ、その後のメディア報道で伝える被告の境遇に同情が集まった。安倍氏を憎む左翼系の人々からは“英雄”のようにも扱われている。

事件後のこの異常な展開は、昭和史研究家の保阪正康氏なども指摘しているように、昭和7年、海軍の青年将校たちが犬養毅首相を暗殺した五・一五事件後、これを“義挙”として減刑嘆願運動が起きたことを想起させる。農村や民衆の疲弊をよそに党利党略に明け暮れる政党や財閥の「堕落」を憤り、決起した青年将校に同情が集まったのだ。

これ以外にも、五・一五事件と安倍氏暗殺とは驚くほど類似点が多い。事件発生直後、「政治的動機からではない」との情報が流れ、その後も政治テロの要素は薄く個人的恨みが動機との報道がされた。しかし、暴力によって社会に影響を与え目的を達しようとするのがテロである。本連載で既に指摘したように、山上被告は社会に不満を持つ主人公が、暴力によって社会を混乱に陥れる米映画「ジョーカー」にヒントを得ていた可能性が高い。個人的な恨みに終わるものではない。

五・一五事件の首謀者の1人、三上卓は、裁判で「首相個人に対する怨みは毛頭ない」と陳述している。殺害された犬養首相は、「憲政の神様」と呼ばれ、軍部にも厳しく対した議会政治家だった。

小山俊樹著『五・一五事件』(中公新書)によると、理不尽に暗殺された首相に対し、当初、民衆は同情を寄せた。しかし裁判が始まり、被告らがその動機など訴え、それを同情的に新聞が報じだしてから、世論は大きく変わった。新聞社には軍部の働き掛けがあった。

軍部の意向に沿った新聞報道がテロの卑劣さから目を逸らさせ、青年将校たちを「英雄」に祭り上げたのだ。それ以降、犬養首相の遺族も肩身の狭い思いをするようになった。新聞報道や減刑嘆願運動が影響して判決では、死刑が求刑されていた首謀者の海軍将校3人は禁錮15年以下に減刑された。

安倍氏暗殺事件後、現在の日本のマスコミも、卑劣なテロの現実から目を逸らし、旧統一教会批判に明け暮れている。これは、結果的にテロリストの目的に資するものだ。

五・一五事件で、戦前の日本の政党政治は終焉(しゅうえん)を迎え、坂道を転げ落ちるように大戦へと向かって行った。テロに厳しく対する姿勢を失い、その一方、信教の自由を軽々しく扱う政治やメディアの風潮は、日本を再び誤った方向へと導く危うさをはらんでいる。

(世界日報特別取材班)

前回の2月28日付本連載「教団襲撃最後まで諦めず」の記事に対し、「山上徹也被告のアカウントは現在凍結されているが、何故DMが読めたのか」との疑問が編集部に寄せられたので、この疑問に答えておきたい。

DMを受け取ったA氏によると、山上被告からのDMは、A氏が昨年12月ごろ、アカウントに届いていた複数の「メッセージリクエスト」を確認している際に発見したという。ツイッターの仕様上、フォロワーではないアカウントからDMが届いた場合、いったんメッセージリクエストに保存され、「許可」を選択しやりとりを開始するか、「削除」、「ブロックまたは報告」のいずれかを選択する流れとなっている。A氏は「許可」も「削除」もせず、リクエストを保留にしている状態だったため現在でもこのDMは読める状態にあるのだという。

A氏が試しに別の端末で同アカウントにログインしたところ、そちらのメッセージリクエスト欄には山上被告からのDMは表示されていないといい、「偶然古い端末でのみ見ることができる、一種のバグのような状態になっているのではないか」と語っている。

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