トップ国内玉城知事「地域外交室」で独自外交を展開

玉城知事「地域外交室」で独自外交を展開

「平和と逆効果」県民から懸念の声

知事選で自衛隊と基地負担軽減を訴えた玉城デニー氏=2022年9月、沖縄県那覇市で(豊田剛撮影)

令和5年の沖縄県議会第1回定例会が2月14日開会した。玉城デニー知事は県政運営の所信表明演説で、県が新たに設置する「地域外交室」について、「平和構築に貢献する独自の地域外交を展開する」と発言した。米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設について改めて反対を訴えていく中での動きだが、県民からは平和と逆効果になるとの懸念や、職務逸脱を指摘する声も聞かれる。(沖縄支局・川瀬裕也)

「知事の職務逸脱」指摘も

県は今年1月、諸外国との地域交流の促進などを目的に、知事公室に新たに「地域外交室」を設置すると発表。玉城知事が推し進める「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」の一環で、「『沖縄のこころ』を広く国内外へ発信する」役割を担うという。運用開始は今年4月を予定している。

玉城知事は昨年9月、知事再選後の地元紙インタビューで、普天間飛行場の辺野古移設反対や米軍と自衛隊基地の負担軽減について、「国連や国際社会の場で県民が、なぜこのように訴えているのか幅広く語る」と表明。また、「政府にカウンターパートを求めるより、世界に問題提起するほうが、幅広いカウンターパートが現れる」とも語っている。新設される「地域外交室」はこれらの訴えを発信する役割を担うのだろう。

2月21日に行われた県議会の代表質問の質疑でも玉城知事は、沖縄のソフトパワーを生かし「アジア・太平洋地域の平和構築に貢献する独自の地域外交を展開する」と再度強調した。

沖縄県の独自外交構想について、地元紙などは「戦争を止めるための自治体外交」などと積極的に評価する論陣を張っているが、県民の中からは「米軍基地反対を国際社会で訴えても喜ぶのは中国だけ。結果的に中国が台湾や沖縄へ侵攻するきっかけになりかねず、逆効果だ」(60代男性、宜野湾市)、「外交は知事本来の仕事から逸脱しているのでは」(30代女性、那覇市)など批判的な声も聞こえてくる。

自治体が政府を通さずにイデオロギーを世界に発信することは危険性を伴う。過去に、一部の声をもとに国連が沖縄県民を「先住民族」と決め付け、権利を保護するよう求める勧告が日本政府宛に計6度も出されている。この問題と基地問題が結び付けられれば、日本の安全保障を揺るがす大きな問題に発展しかねない。

玉城知事は14日の所信表明の中で、「安全保障環境が厳しさを増していることは認識している」と前置きしながらも、「米軍基地が集中していることに加え、自衛隊の急激な基地機能強化により、沖縄が攻撃目標になるリスクをさらに高める事態を生じさせてはならない」とも発言している。

この発言を真っ向から否定するのが米海兵隊のデビッド・バーガー総司令だ。バーガー氏は日経新聞のインタビュー(16日付)で、日米の抑止力強化に伴う「第1列島線(沖縄から台湾、フィリピンを結ぶ線)」周辺での制海権を確保することによって台湾有事を阻止し、中国との衝突を回避できると述べている。

安全保障の実務を担う米軍や防衛省などの声を無視し、持論をもとに「独自外交」を展開しようとする玉城氏の姿勢には危うさを感じる。

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