【連載】安倍元首相暗殺の闇 第3部 テロ直視せぬ危うさ(1)
安倍晋三元首相の銃撃事件で、山上徹也被告(42)の「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への恨みから犯行に及んだ」との犯行動機が報道されると、安倍元首相と共に襲撃の対象であったはずの同教団は、事件の「加害者」のように位置付けられ、激しいバッシングが開始された。
そういう中でわれわれ取材班は、新たな情報を入手した。山上被告は、情報収集のために旧統一教会関係者とのやりとりを何度か試みていたが、事件の約1週間前6月30日に、同被告のものとみられるツイッターアカウントから旧統一教会関係者に、意味深長な内容のDM(ダイレクトメッセージ)が送られていたのだ。

山上被告からDMを受け取ったのは埼玉県内の教団関係者A氏。そのアカウントは「〇〇教会〇〇部」のように、教会名を明かして運営されていたという。
DMで山上被告は、母親が信者であることを明かし、かつては自身も教会に通っていたと“自己紹介”。その上で、「最近は懐かしくもあり時々〇〇教会(A氏の所属する教会)のホームページを覗かせて頂いてました」と、教団に恨みを抱いている人物とは思えない口ぶりで続ける。
その上で「教会の活動にがっつり参加したい訳ではないのですが」と控えめな態度を示しつつも、さも教会を懐かしみ戻りたがっている元信者を装う形で、「コロナ自粛も明けた事ですし何か大きな大会などあれば参加できたらなぁと思っていた所、週報に〇〇フェスティバル?という記載を見ました。これはどんな催しでしょうか?参加できたりしますか?」と質問している。
A氏によると、○○フェスティバルは7月10日にさいたま市内の屋内会場で予定されていた2千人規模の集会で、日本や韓国の教団幹部らも出席する予定になっていたという。山上被告はこの情報をネット上で知り情報収集した上で参加しようとしていたものとみられる。
安倍氏の当初の遊説予定では7月8日、奈良県の近鉄・大和西大寺駅前での演説後、夕方には埼玉県のJR大宮駅前で遊説に立つ予定で、このことは事前にSNSなどで告知されていた。各種報道によると山上被告は事件直後、「埼玉県も襲撃の候補にしていた」と証言しているという。
このことからも山上被告は、安倍氏の足取りを把握した上で、大和西大寺駅、そして埼玉でも安倍氏の襲撃に失敗した場合、「本来の敵」(山上被告が事件前、ジャーナリスト・米本和広氏に宛てた手紙から引用)である教団幹部を狙うため、7月10日の○○フェスティバルに向かう準備を進めていたことが分かる。
A氏は当時、このDMに気付かなかった。その後、事件から約5カ月が過ぎた昨年の12月ごろに気付き、送り先のアカウントが山上被告のものだと知り衝撃を受けたという。もし当時A氏がこのDMに返信し情報を与えていたら、教会幹部が犠牲になっていた可能性もある。
事件前日の7月7日、山上被告は岡山県での安倍氏の遊説会場にも足を運んでいるが、会場に入れず断念したという。このことからも、屋内会場であっても銃撃を計画していたことは明らかだ。
場合によっては、教団側はテロの被害者となっていた。そのことが完全に無視されたまま教団へのバッシングが続く言論空間には危ういものがあると言わざるを得ない。(世界日報特別取材班)