子供の「科学への関心」高揚目指す
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沖縄県は、科学技術に対する理解と関心を高めることを目的に、昨年11月12日~12月11日の1カ月間を「おきなわサイエンステック月間」に定め、さまざまな行事が行われた。その締めくくりとして未就学児から高校生、その保護者を対象にした「サイエンステックフェス2022」が12月11日、那覇市のサンエー那覇メインプレイスで開かれた。さまざまな実験が行われ、子供たちは目を丸くし、高校生たちは研究発表を行った。(沖縄支局・豊田剛)
企業や団体、学術機関が出展
海岸に大量に流入した 軽石コーナーが人気に
おきなわサイエンステック月間では、県内各地で行われている、液体窒素実験やプログラミング体験などさまざまな分野のブースが設置され、サイエンスショーなどのステージも行われた。「サイエンステックフェス2022」は企業や団体、学術機関が出展し、沖縄県内で実施している科学技術イベントをさらに盛り上げていくため今回、初めて行われ、多くの親子連れが参加した。
子供たちの関心を集めていたのは、軽石のコーナーだった。昨年、沖縄の海岸に大量に流れ込んだ軽石。特に特徴もないように見える軽石でも、ルーペで根気強く探すと端正な鉱物の結晶を見つけることができる。無色透明または灰色半透明で板状をしている曹長石を見つけると、歓声が上がっていた。普通輝石やカンラン石といった他の鉱石も見ることができた。
今回、イベントで登壇したのは、沖縄県教育委員会がスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定している向陽高校(八重瀬町)の2年生。生物学では「アリの侵入を防ぐ」ことをテーマに研究発表した。学校や家の中にいるアリと外にいるアリの種類の違いを見つけ、外のアリが家に入ってこない理由を見つけて、その理由となる環境を家に持ち込むことで、家の中からアリを排除できると仮説を立て、研究しており、その途中経過を報告した。
生徒らは、学校や生徒の自宅で400平方㍍の範囲でアリを採取し、種類を特定した。
学校の校舎外3カ所で採取した結果、クロヒメアリ、シワヒメアリ、アシナガキアリ、ケブカシワアリ、フタイロヒメアリ、オキナワウメマツアリ、フタモンヒメアリ、オオシワアリ、カドムネシワアリ、イカリゲシワアリの10種類も見つかった。中でも、多かったヒメアリ属は、「雑食性があり、花の蜜によく集まり、石の下や植物の隙間などに生息し、家の中まで入ってくることがあり、暖かい場所を好むのが特色で、家の中まで侵入してくることがある」と分析。屋外では、「グランドに体が大きめのアリ、駐輪場と広場に小さめのアリが生息する傾向があった」と報告した。
一方、自宅で採取した結果、アシナガキアリ、イエヒメアリ、クロヒメアリ、アミメアリの4種類が確認できた。屋内外どちらにもいるアリの種類があったことが分かった。中でも、「アシナガキアリとヒメアリ属は屋外から家の中に侵入する」と分析した。「家の中でも外と接する窓の下やリビングルームやキッチンのゴミ箱の中では違いがあるのではないか」とし、「気温や湿度などの気象条件を踏まえた上で、継続して調べていきたい」と抱負を語った。
さらに、情報学の分野では、「嘘をつく時の身体変化~人狼を見抜け」と題して、嘘(うそ)を見抜く方法について研究発表した。従来行われてきた「うそ発見器」として知られるポリグラフ検査が本当に嘘を見破ることができるのか、信憑(しんぴょう)性に疑いを持ったことが研究のきっかけ。「嘘をついている時の反応が表情派と行動派とで分かれるのではないか」という仮説を立て調査分析をした。
調査では、学校のクラスメート4人で、味方に成り済ました犯人を会話の中で探し出す「人狼ゲーム」で実験を行った。表情、手汗、脈拍、動きの4項目を総合して犯人を特定できると推論。表情については、スマートフォンのカメラで撮影し、まばたき、目線、口角、眉毛を観察した。結果、犯人は、容疑を疑われた際に脈拍が上がり、まばたきの数が多くなり、顔が引きつるなどの反応があった。
今後の課題としては、①平常時の脈拍を調べておいて変化を調べたい②表情の変化についても動画にして数値で表す必要がある③嘘にも種類があると気付き、その分類についても調べていく必要がある――とし、精度の高い研究を続けていく意向を示した。目を丸くし、興味深そうに話を聞いていた小学5年生の男子児童は、「嘘をつくのは良くないけど、それを見抜けることも大切だと思った」と感想を語っていた。