月刊誌「文藝春秋」1月号 DIA文書の「警告」を隠蔽 旧統一教会の対北資金で臆測報道

「4500億円」根拠示さず

本紙が入手した米国防総省1994年9月9日付「北朝鮮と統一教会の関係」報告書の表紙

月刊誌『文藝春秋』創刊100周年の新年特大号(2023年1月号)に掲載された記事「ペンタゴン文書入手 北朝鮮ミサイルを支える統一教会マネー4500億円」(柳錫+本誌取材班)が根拠にした米国防総省情報局(DIA)の情報報告書は「最終的に評価された情報=インテリジェンス=ではない」との警告付きであることが明らかになった。同記事はこの事実を伏せたまま、報告書の内容の真偽を検証もせずに伝聞や類推発言を連ねるだけで論を進めており、根拠の乏しい憶測記事となっている。その他にも重要な部分で事実誤認が明らかになった。(「宗教と政治」取材班)

本紙がこのほど入手した、この記事が翻訳・引用したものと思われるDIA文書2通は、1991年末、統一教会の文鮮明教祖と北朝鮮の金日成主席が会談した前後の事情に関して1994年に作成されたもの。同年8月14日付は、両氏の合意内容(「統一教会が平壌に四つのホテルを建設することと、金剛山の大規模観光開発を請け負うことを北朝鮮政府が許可する)について「この取引の総額は5億米ドルを超えると推定されている。金日成との最初の取引で、文鮮明は着手金として数千万ドルを海外口座に支払った」と記載。また、同9月9日付は「北朝鮮は、世界基督教統一神霊協会(統一教会)の創設者・文鮮明が1991年に4500億円、1993年に300万ドルの寄付を行った後、統一教会との関係を確立した」などとしている。

このDIA報告書は2004年以前に米国で出回っており、米国防総省の文書であることを示す表紙には「警告」として「これは情報報告書(INFO REPORT)であり、最終的に評価されたインテリジェンスではない(NOT FINALLY EVALUATED INTELLIGENCE)」と明記されている。

インフォメーションとインテリジェンスの違いは情報分野に携わる人間にとっては非常に大きい。インフォメーションはただ伝え聞いたり収集したままの「生の情報」であり、インテリジェンスは「信憑(しんぴょう)性を吟味した上で解釈を施した情報」を意味する。つまり、DIA文書であっても情報報告書は生の情報の報告にすぎず、信憑性については何の保証もない。

報告書が作成されたのは、民主党のクリントン大統領時代で、北朝鮮の核開発をめぐり一触即発の状況が続く中、カーター元大統領の訪朝と金日成主席との会談(94年6月)、金主席の死去(7月)、米朝「枠組み合意」調印(10月)と米朝関係が激動していた時期だ。当然、報告書の内容が信憑性ありとみられていたら米政府は捜査に動くはずだが、そんな動きはなかった。また、2004年に報告書が統一教会に批判的なジャーナリストによって報じられた際も、米主要メディアは全く関心を示さなかった。

ところが同記事は、この「警告」に言及しないだけでなく、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が北朝鮮と関係を確立する前に支払ったとされる1991年の4500億円や93年の300万ドルなどの資金についても、報告書の記述以外の何の根拠も示さないまま、ペンタゴン文書であることだけを強調して、事実であるかのような前提で論を進めている。

安倍晋三元首相銃撃事件後に醸成された旧統一教会批判なら何でもありという風潮に迎合した報道であり、「時流におもねらない編集方針」を掲げる同誌にとって大きな汚点となりかねない。

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