トップ国内ホテル、旅館は深刻な人手不足 10月の国内観光客は過去最多も

ホテル、旅館は深刻な人手不足 10月の国内観光客は過去最多も

コロナ後見据え転換必要

人出が戻りつつある那覇市の繁華街=12月4日、沖縄県那覇市久茂地

政府の観光支援策「全国旅行支援(全国旅行割)」の影響で沖縄観光の需要が伸び、10月の国内観光客数は過去最多を記録した。その一方で、ホテルや旅館の人手不足が深刻化。レンタカー不足にも拍車がかかっている。新型コロナウイルス感染をきっかけに、沖縄観光は量から質への転換が求められている。(沖縄支局・豊田剛、写真も)

レンタカーに代わりシャトルバス利用を

沖縄県は10月の入域観光客数が63万700人で、前年同月比で約2・1倍、人数にして33万1700人も増加した。そのうち、国内客が62万8000人で、10月の国内客数としては新型コロナウイルス感染拡大前の水準を上回り過去最多となった。

シャトルバスの利便性を強調したJTB沖縄の杉本健次社長(右)=11月17日、沖縄県宜野湾市の沖縄コンベンションセンター

また、今年7月~9月の期間で、国内客1人当たりの平均消費額は12万173円、平均宿泊日数は3・5泊と、いずれも過去最高となった。

10月の国内客が過去最多となった要因について、県文化観光スポーツ部観光政策課の金城康司課長は「過去2年と比較して行動制限がなく、これまで観光を待ち望んでいた本土からの観光客が多く沖縄を訪れたことが大きな要因」と分析した。政府による旅行需要喚起策が10月に始まり、「旅行の代金助成などが沖縄への観光客を増やした」との見解も示した。

11月から12月にかけても、国内線の予約状況は前年同月比で約2倍になっていることから、11月の国内客も過去最多となる見通しだ。

ただ、手放しでは喜べない現状がある。沖縄県ホテル旅館生活衛生同業組合の宮里一郎理事長によると、「人材不足は非常に深刻で、応募しても集まらない」。新型コロナウイルス感染の影響で大半のホテルと関連業界は大幅な人員を削減しており、人材が圧倒的に足りない状況が続いている。

那覇市のあるリゾート型ホテルは、「従業員総動員で残業をお願いしながら何とかやっと回しているのが現状」で、11月のホテル稼働率は前年同期比で3倍近くまで回復したが、夕食や宴会のサービスは止めているという。他のホテルは、従業員不足で、空き部屋があっても予約を止めているところもあるという。

コロナ禍で落ち込んだ財政の回復も課題だ。那覇市のある大手旅行社は、全国旅行支援で同社が建て替えた補助金がこれまで一度も支払われていないという。「苦肉の策として、お客様にはまず全額支払ってもらい、国から補助金を支給された後に割引分を返金することで対応している」と話した。別の旅行会社の幹部は、「補助金を申請するための書類作成で従業員の負担は増えるだけだ」と不満を漏らした。

沖縄観光コンベンションビューロー(OCBV)など県内の観光産業に関連する団体で構成する「沖縄ツーリズム産業団体協議会」(会長・下地芳郎OCBV会長)は10月下旬に那覇市で意見交換会を行い、現状と課題を共有した。その際、ホテル、飲食業、リゾートウェディングなどの観光現場からは、「来年度の新規雇用に関して、観光業界に従事する大学や専門学校の学生への奨学金助成や、観光業に携わる人材を育成する学校・学科などへの助成など、県に取り組んでもらいたい」という要望も出た。

こうした意見を踏まえ、同協議会など経済団体関係者が11月24日、県庁を訪ね、「2年以上続いた人流の抑制による痛手は深刻」(下地会長)とし、実効性のある施策を示すよう県に求めた。

沖縄ではコロナ禍でレンタカー台数が大幅に減った影響で、慢性的なレンタカー不足が続いている。OCBVや市町村の観光協会で構成する県観光協会等協議会は8日、現在の観光課題について議論し、レンタカー不足に対応する代替公共手段としてバスの利活用が提案された。これに先立ち、11月17日、宜野湾市で開催されたIT・DX展示商談会「リゾテックエキスポ」で行われた観光関連シンポジウムで、JTB沖縄の杉本健次社長は、「過度にレンタカーに依存してはいけない。SDGsの時代では利便性の高い公共交通が必要。だから空港から沖縄本島北部の主要観光地やホテルを結ぶシャトルバスを運行しており、レンタカーが借りられない人や、運転したくない人に利用されている」と説明した。

スマートフォンの位置情報から算出した人出データを公表しているAgoop社の柴山和久代表は、沖縄本島中部の北谷町の人出は今年8月にコロナ前を上回るレベルに回復したと発表した。那覇からバスで行けるなど「アクセスも良くレンタカーがなくでも大丈夫」と説明。コロナ禍前より滞在日数が増えていることについては、「時代の流れに合った新しい観光の形ができている」と述べ、レンタカーに頼らない観光の在り方を考えるよう提案した。

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