1995年のオウム真理教事件(29人死亡、6000人以上が負傷)の際、破壊活動防止法(破防法)を適用するか否か大きな議論になったが、一貫して反対したのが日本共産党だった。この法律は今から70年前の52年7月21日、共産党による殺人・放火・詐欺などの犯罪の激増を警戒し取り締まるために制定されたものだ。
もしオウム真理教に初適用されれば、共産党の“前科”が再びメディアにあふれ、国民の非難を浴びることが想定されたし、何よりも適用の前例を作りたくなかったからだろう。それは今も共産党が、公安機関から暴力革命を実行する可能性のある集団として破防法の調査団体に他の過激派とともに位置付けられていることからも推察される。
歴代政府は同党の危険性を確認し続け、公安警察の調査対象になっていることを答弁してきた。岸田政権でもそれは同じだ。政府は10月14日、日本共産党に対して「暴力主義的破壊活動を行った疑いがあり、また、同党のいわゆる『敵の出方論』に立った暴力革命の方針に変更はない」との答弁書を閣議決定した。NHK党参院議員の質問主意書に答えたものである。
これに対し共産党の田村智子政策委員長は同日、「先日の100周年の記念講演の中で、志位和夫委員長が私たちがいかに暴力革命と無縁であるかということを歴史の事実に照らして詳細に話した。そういう認識の発展がないのか。暴力なんて入る余地がない。こういう攻撃をいつまでも続けることは重大だ」と開き直りの記者会見を行った。過去の都合の悪い事実をもみ消す手法を「認識の発展」ということで済まそうとしたのは共産党らしい総括の仕方だ。
ところが、鈴木宗男参院議員(日本維新の会)が11月25日、その「100周年記念講演」での志位委員長の発言に関する質問主意書を提出。
「いわゆる『敵の出方論』に立った『暴力革命の方針』に変更はない」と横尾洋一公安調査庁総務部長の述べたことを「綱領路線を百八十度ねじまげ、歴史の事実を歪曲した悪質なデマ」としたことや、「『敵の出方論』をもちだして『暴力革命』の根拠とする議論が成り立たないことは(略)決着ずみ」とホームページに掲載していることに対する政府の認識を質問。政府は12月6日、改めて「認識に変わりはない」との答弁書を決定した。
質問主意書をめぐっては、安倍晋三政権時の2016年3月には鈴木貴子衆院議員、菅義偉政権時の20年11月には鈴木宗男参院議員、第1次岸田政権の21年11月と第2次改造内閣の22年10月には浜田聡参院議員が提出。そして今回、鈴木参院議員が先の質問主意書を提出した。政府の回答は、いずれも共産党に対する警戒姿勢に変化はないというものだった。
その根拠は二つある。共産党が過去、破防法に抵触する暴力主義的破壊活動を行ったことを一方の分派の責任とし、国民に対して無反省で済ましていることだ。これでは党内に新たな武装闘争派が台頭してくる可能性を否定できない。
また、「共産党の革命の形態が平和的になるか非平和的になるかは敵の出方によるもの」とする宮本顕治委員長以来の「敵の出方論」が維持されている点だ。歴代政府が一貫して警戒を解かないのはこうした解けない理由があるからだ。
志位委員長は「『敵の出方論』という表現を使わないことにした」と最近、言うが、使わなくても実行しない保証にはならない。「議会の多数を得ての革命をすすめる」というなら、「敵の出方論」の放棄と暴力の永久不使用宣言を綱領に明記することだ。そして、戦前・戦後を通じての過去を真摯(しんし)に反省することも国民に信用される必要最低条件である。(日本共産党100年取材班)
(おわり)
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