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世界各地のウチナーンチュ(沖縄県出身者)とその家族らが一堂に会する「世界のウチナーンチュ大会」が10月30日から11月3日にかけて県や民間団体でつくる実行委員会の主催で開催された。期間中は各地で関連イベントが催され、県内はお祭りムードに包まれた。海外からは2000人以上が来県し、親族との再会や自身のルーツである故郷の伝統文化を楽しんだ。
(沖縄支局・豊田剛、川瀬裕也)
見えない固い絆、再会誓う
音楽ライブで7000人熱狂
沖縄県からの移民やその家族は米国ハワイや南米を中心に世界各国に約42万人いると推計されている。大会は、親族のつながりを重んじるウチナーンチュの絆を深めることを目的に、1990年の第1回以降、5年に1度開催されている。
今大会は新型コロナウイルスの影響で1年延期での開催となり、例年よりも参加者は少なかった。大会の様子はオンライン配信も行われた。
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30日には、那覇市の国際通りで前夜祭パレードが行われ、約3000人の参加者はそれぞれの国や地域の特色ある衣装や飾り物を着けて国際通りを練り歩いた。ラーム・エマニュエル駐日米大使には沿道の人々から「おかえりなさい」「めんそーれ」などの歓声が上がった。
同日午後の開会式は雨で規模が縮小されての開催となった。玉城デニー県知事は「沖縄から移民を始めて120年となり、その苦難を乗り越えて世界にいるウチナーンチュと時空を超えてこの場所で再会している」と述べ、参加者を歓迎した。式では東京五輪で金メダルを獲得した空手の喜友名諒選手らも参加して演武を披露し、その場を盛り上げた。
11月3日、沖縄セルラースタジアム那覇で行われた閉会式には約7700人が集まった。玉城知事は、「私たちはウチナーネットワークという強い絆で結ばれた『ヤーニンジュ』(家族)だ」と強調。ユイマール(助け合い)、ヒヤミカチ(困難に打ち勝つ精神)、チムグクル(肝心)、命(ぬち)どぅ宝などの「沖縄の心」を次世代につないでいこうと呼び掛けた。ウチナージュニアスタディーツアーに参加した南風原中2年の平田菜乃華さん(14)とオンラインで参加したアルゼンチン在住の県系3世知念パブロ明さん(17)が、「私たちウチナーンチュは目には見えない固い絆で結ばれています。だから私たちは5年後にまた会えるでしょう」と大会メッセージを宣言した。
スタジアムの客席は、色とりどりの国旗がはためく中、自分たちの国名をコールし合って、サッカーワールドカップのような雰囲気になった。グランドフィナーレでは、BEGINや紫、ディアマンテスなど沖縄を代表するアーティストらが出演すると、沖縄やラテンのリズムに自然と体が動き出し、スタジアムは歓喜と笑顔で満たされた。
閉会式の日には、火災した首里城正殿の起工式も行われた。ペルーから訪れた沖縄3世のアントニオ佐和田さん(39)は、起工式に続いて閉会式に参加した。沖縄の親戚を失ったといい、墓参りも兼ねての来沖となった。「首里城の火災もあって二重に心を痛めていたが、大会に参加して嫌な気持ちがすべて吹っ飛んだ」と喜んだ。今回が3回目の参加というが、「5年ごとにウチナーンチュの絆を確認することは生きがいになっている」と話し、次回開催予定の27年の再訪を誓った。
マラマの精神で「再生する観光」を
デービッド・ユタカ・イゲ(伊芸豊)ハワイ州知事
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沖縄移民3世であるハワイ州知事のデービッド・ユタカ・イゲ(伊芸豊)氏の講演会(主催=ライオンズクラブ国際協会337D地区沖縄リジョン)が10月31日、那覇市ぶんかテンブス館で行われた。以下は講演要旨。
過去3年間を振り返ると、新型コロナウイルスによって私たちの生活は大きく変えられてしまった。しかし良かったことは、ハワイの観光の在り方について地元の人と一緒に考えるきっかけになったことだ。
そこで生まれた一つのビジョンは「再生する観光」だ。観光が今後何世代にもわたり、良いものであり続けるという考えだ。経済的な利益だけでなく、新鮮な空気やきれいな水、生き生きした人々や伝統・文化までも価値あるものとして再認識する必要がある。
これまでハワイが大切にしてきた価値観が「アロハ」だ。アロハは挨拶(あいさつ)はもちろん、愛情や敬意を表すものでもある。これからの100年を考えたとき、われわれは「マラマ」の価値観を世界に伝えていかなければならない。マラマは周りの人を思いやり、われわれが共有している地球をも大切にするという意味だ。
ハワイにとって日本人の観光客はとても大切だ。なぜなら日本の皆様は私たちのマラマの精神を共有しているからだ。特に沖縄とハワイは重要な関係を築いてきた。交換留学制度をはじめとした人と人との交流が盛んに行われ、1985年からは姉妹県・州の関係にもなっている。またエネルギー分野でも2020年に「沖縄・ハワイクリーンエネルギーパートナーシップ」が締結されており、地球を守る意味においても最も重要な関係だ。