全国弁連「霊感商法被害」の実相(上) 昨年の「被害」は2件、91万円
全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)は、安倍晋三元首相が凶弾に倒れた直後、容疑者の一部供述内容が奈良県警から流され、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に注目が集まると、テレビ番組や立憲民主党、共産党など野党のヒアリングで、霊感商法の被害は今も続いており、1987年から2021年まで全国弁連と消費者センターに寄せられた相談件数は3万4537件、被害額は1237億円だと宣伝した。
しかも、紀藤正樹弁護士は、「1237億円という被害額は、被害の一部」であり、「一般的に消費者相談の窓口が十分に機能していれば10分の1くらいが統計に表れる。機能していなければ100分の1と言われる。仮に10分の1だとしても、1兆円を超える被害が過去に起きている」と指摘。さらに、「相談件数も…10倍とみたら34万の被害がある。その周りに家族もいることから、さらに3~4倍と考えればゆうに100万人以上の被害者が過去に綿々と見えない形で埋まっている」(以上、しんぶん赤旗7月27日付1面)とまで述べている。
このような主張の根拠となっている全国弁連の霊感商法被害の統計にも、実は大きな誇張がある。
まず、紀藤弁護士は3万4537件の「相談件数」を相談した人数のように語っているが、それは事実とは違う。
全国弁連ホームページの霊感商法被害集計の商品別被害集計には1987年から昨年(2021年)までの被害件数と被害金額が年別、さらに1987年、88年の2年を除いて「商品」別に記録されている。ところが、この「商品」の内容を見ると、一般的に霊感商法と関連した商品とみられている印鑑、数珠・念珠、壺(つぼ)、仏像・みろく像、多宝塔の5項目(以下、開運商品)だけでなく、健康食品(人参(にんじん)濃縮液)や絵画・美術品、呉服、宝石類・毛皮、仏壇・仏具の5項目(その他商品)、さらにとても「商品」とは思えない4項目、通常は信仰を前提として宗教団体に捧(ささ)げる「献金・浄財」、個人の債務である「借入」、学びのために出費する「ビデオ受講料等」、さらに全く正体不明の「内訳不詳・その他」の「被害」まで集計されている。
紀藤弁護士が「相談件数」と述べているのは、この14項目ごとの「被害」件数を合計したものだ。だから集計では「被害件数」と表記されている。例えば1人の相談で、被害品目が14項目にわたっていれば、集計では14件とカウントされるわけだ。つまり被害件数を人数のように語るのは、数倍から最大十数倍にも誇張された数を語っていることになるわけだ。
これまで、全国弁連の被害集計について、「相談件数をそのまま被害件数としている」との批判も出ていたが、それは商品別被害に分類されていない1987年、88年の2年分に関しては妥当かもしれない。しかし、それ以降の統計については、被害集計の件数を「相談件数」と述べて、あたかも相談した人数であるかのように思い込ませている。それが誇張につながっている。