市職員らの証言続々
適応障害などで3人が訴訟
の応援を受けた山川仁氏(右)=2018年9月、沖縄県豊見城市.jpg)
沖縄本島南部で那覇市のベッドタウンとして成長著しい豊見城市の市長選が10月9日に投開票される。現職で再選を目指し、玉城デニー知事を支持するオール沖縄系の山川仁氏(47)によるパワーハラスメントが明らかになっており、選挙戦に大きな影響を与えそうだ。(沖縄支局・豊田 剛、写真も)
自公推薦の徳元氏職場環境の改善訴え
豊見城市の山川市長や小川和美副市長によるパワハラ問題は昨年10月の市議会で、市議の一部から「山川市長が複数の職員に対してパワハラを行っている可能性がある。メンタルが原因で休職している職員がいる」と質疑を行ったことで明るみに出た。

市長によるパワハラ問題をめぐっては、昨年12月、市議会が「実態把握調査特別委員会」(大城吉徳委員長)を設置。その動きを察知した山川市長は、自らの潔白を示す目的で「第三者委員会」(平良卓也委員長)をすぐに設置した。
特別委員会では、班長級以上の職員165人にアンケートを行い、今年2月3日に結果が公表されている。130人から回答を得ており、「パワハラを受けた」との回答は26人(20%)、「見聞きしたり相談を受けた」は91人と全体の70%にも及んだ。パワハラを受けた相手は、市長が22人、副市長が8人、教育委員が1人、その他が3人だった。
引き続き、3月30日に「第三者委員会」が実施したアンケートでも同様の結果が出た。市職員823人が対象で、469人が回答。「パワハラを受けた」と回答したのは113人(24%)。このうち33人は山川市長など市三役から受けたと回答した。
特別委員会の中間報告では具体的な事例が紹介された。
<市長より県に提出する依頼文書作成の指示を受けて15分程度経過した頃、市長が執務室内に入ってきて「まだか」との発言を受けた。文書作成には県から情報を収集する必要があることを説明したが、「あなたはのんびり仕事をするんだな。30分後に直接県に提出しに行くからすぐに作成しろ」と発言があった。文書の内容について市長とも調整を要すること、正式な公文書となるため起案も必要なことを説明したところ、「市長の私が指示しているのだから、起案などは後回しにしろ」と恫喝(どうかつ)を受けた。>
また、市長から「誰が課長にしたと思っているんだ、飛ばすから覚悟しておけ」という脅しや、机をたたきながら「二十何年も役所で働いて、あなたはその程度なのか」と叱責されたケースが報告されている。
二つの調査に先立ち、野党市議団が市役所の管理職161人を対象にパワハラ実態調査を行い、現市政の人事管理は「不適切」だという回答が75%に達した。
こうした明確な結果が出たにもかかわらず、弁護士の平良委員長は「この結果でパワハラの有無を判断することは難しい」とパワハラ認定を避けた。
山川市長は、「調査結果を重く受け止める」とは述べたものの、パワハラを行った認識はないと否定している。記者団には「職責を全うする中で、熱い思いで指示をすることがある。それで心を痛めた人もいるかもしれない。改善すべきところは改善していきたい」と話した。暗にパワハラを認めた発言だ。
8月26日は、豊見城市の職員3人が、市長らからパワハラを受けて適応障害などになったとして、市に約620万円の賠償を求める訴訟を那覇地裁に起こした。
訴えによると、職員の1人は、市長に業務報告を行った際などに繰り返し叱責を受けた。その上、かつての担当業務での市の不祥事に関わる謝罪会見に強制的に参加させられるなどして適応障害になり、3カ月近くの休職を余儀なくされたと説明した。
別の職員は、8カ月の間に3回の人事異動があって精神的な苦痛を受けた。もう1人の職員は、身に覚えがないことで厳重注意処分が言い渡され、評価を下げられて給与が減らされたと訴えた。原告代理人の二宮千明弁護士は「3人の他にも多数の職員がパワハラを訴えていて、職場環境の改善のため、一日も早く提訴することにした」と話した。
山川氏は再選に向けて8月21日に出馬表明を行い、「保革の立場を乗り越え『市民党』の立場で、幅広い市民の声を形にしていく」と述べ、パワハラ疑惑の問題払拭(ふっしょく)に努めた。
市長選は山川氏と、自公が推薦する予定の新人で前市議の徳元次人氏(41)による事実上の一騎打ちになる様相を示している。8月28日の出馬表明で徳元氏は、現市政で「退職する職員が出ており、負担が増えている」と指摘。「市長が政策を掲げても、職員が疲弊したらできない」と語り、市役所の職場環境の改善が急務だと訴えた。
新人で会社経営の辻内岳晴氏(42)も出馬の意向を示している。自公とオール沖縄勢力と一線を画した第三極として経済政策や子育て教育問題を訴えている。