トップ国内沖縄県知事選 11日投開票 経済の再生、誰に託す

沖縄県知事選 11日投開票 経済の再生、誰に託す

玉城県政の公約達成は2%

佐喜真陣営 振興予算減額に危機感

立候補届け出当日、演説する(左から)下地幹郎氏、佐喜真淳氏、玉城デニー氏

沖縄県知事選が終盤戦を迎えている。米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設の是非よりも争点になるのは新型コロナウイルス感染の影響を受けた経済の再生だ。経済再生を現県政に託すのか、県政交代を選ぶのか、重要な岐路を迎える。(沖縄支局・豊田 剛、写真も)

同日の県議補選で与野党勢力逆転も

出馬しているのは届け出順に、元郵政民営化担当相で無所属新人の下地幹郎氏(61)、前宜野湾市長で無所属新人の佐喜眞淳氏(58)=自民、公明推薦=、2期目を目指す無所属現職の玉城デニー氏(62)=立民、共産、社民、社大、にぬふぁぶし、れいわ推薦=。実質的に玉城氏と佐喜真氏による一騎打ちの情勢だ。

約実現率を強調する玉城陣営のビラ

玉城氏は先月25日、那覇市で行った出発式で「4年前に掲げた291項目の公約のうち287項目で取り組みを進めている」と報告した。28日、豊見城市で行った演説でこうも述べている。

「私は達成率という言葉はなじまないので使いません。やったかやらなかったか、政治家は結果責任だというのであれば、それをやったという実現率に例えると、私の取り組みは98・6%です」

ところが、291項目のうち実際に達成できたのはわずか8項目だけだ。内訳は、8が完了、279が着手済み、調整中は4項目。これを玉城氏は着手し、予算化しているものを含め、287項目を実現したと独自の認識を示している。候補者討論会や街頭演説で98・6%という実現率を訴え、法定ビラでもこの数字を強調している。

さらに、達成済みと玉城氏が主張する八つの公約の中に、沖縄県ではなく安倍政権で国の施策として実施されたものがある。那覇空港の第2滑走路建設、奄美沖縄の世界自然遺産登録、幼児教育無償化がそれに当たる。

那覇空港は、仲井眞弘多知事との約束で国の事業だ。幼児教育の無償化については、2017年の衆院選で自民と公明が公約に掲げ、19年10月から実施された。なお、玉城氏を推薦している立憲民主や共産党は無償化に反対した。

佐喜真氏は「経済危機突破」をスローガンに、県民との約束を果たせない玉城県政を手厳しく批判する。

出陣式では、新型コロナウイルス感染の影響で沖縄経済を牽引する観光業が大きな打撃を受けたことを念頭に、「多くの関連事業者から『助けてほしい』という声が私の耳に届いている。観光関連産業の皆さまに、1000億円規模の支援を必ず実現する」と約束。自民党沖縄振興調査会の小渕優子会長は「この選挙は何もできない、何もしない、停滞する県政を続けるのかどうかを決める大事な戦いだ」と強調した。

沖縄振興予算は減る一方だ。2023年度の沖縄関係予算の概算要求額は前年度を200億円下回る2798億円となった。県が国に求めていた3200億円余りの予算を400億円ほど下回り、2年連続で3000億円を割った。

県の予算折衝力が弱いことを尻目に、西銘恒三郎衆院議員は沖縄担当相だった今年5月31日、強い沖縄経済の自立に向けて沖縄振興施策「西銘ビジョン」を取りまとめた。西銘氏は8月28日、自身の政策報告会で「3000億円は仲井眞知事と安倍首相の閣議懇談会で、10年というのが了解の元にあった」とし、「過去一番低い時の2300億円をベースにどう積み上げていくのかが問われている」と述べた。SNSでは、基地問題で国との裁判闘争を繰り返すなど、「県民の命と暮らしを守るべき県知事の職務意識が薄いと判断せざるを得ない」と批判した。

報告会に出席した佐喜真氏は、沖縄振興予算について「本来は知事が政治折衝すべきだが、玉城県政のエネルギーが見えてこない。このままではさらに減額するのは目に見えている」と批判した。宜保晴毅(ぎぼはるき)元豊見城市長は、「国と県と市町村のパイプは必要。対立していたら絶対に予算は入ってこない。(玉城氏が再選し)あと4年も予算が減額されたら大変なことになる」と危機感をあらわにした。

知事選と同日に、県議の補欠選挙(那覇・南部離島区)が行われる。10月23日に投開票される那覇市長選への出馬を進めている翁長雄治氏が県議を辞職したことを受けたもの。現在、県議会の勢力は翁長氏の辞職で与党側が23議席、野党・中立側は議長を除いて23議席と、拮抗している。与党と野党・中立のどちらが補欠選挙の1議席を獲得するかで議会運営をめぐる主導権争いが決する。

自民公認候補が当選すれば与野党の勢力バランスが逆転する。ただ、佐喜真氏が知事に当選しなければ、県政と県議会との“ねじれ”が生じる。

7月の参院選は自民公認候補が僅差で革新系現職に破れたが、那覇市で現職に差を付けられたことが敗因の一つだ。革新優位の那覇で今回、自民がどれだけ盛り返せるかが注目される。

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