新しい国創りへ本分果たせ

開票センターで当選確実の候補者名に花をつける岸田文雄首相(自民党総裁)=10日夜、東京都千代田区

政治部長 武田滋樹

選挙戦最終盤に安倍晋三元首相が凶弾に倒れる不測の事態が発生した第26回参院選が10日投開票された。自民、公明の与党が改選過半数を確保し、両党に日本維新の会と国民民主党を加えた、いわゆる改憲勢力が非改選を含め、参院で改憲発議に必要な3分の2以上の議席を確保した。

ただ、改憲勢力の中心にいた安倍元首相の急逝による空白感は極めて大きい。

2度首相に就任し、通算3188日と憲政史上最長の在任期間を誇るだけでなく、退任後も与党・自民党の最大派閥の領袖に就いて、経済、外交、安全保障論議などに大きな影響を及ぼしていた。余人をもって代え難い存在感の大政治家を失った喪失感は大きいのだ。

 国際的に見ると、ロシアの侵略によってウクライナの平和と安全が踏みにじられ、中国が香港で「全面的な統治権を実現」することで、その自由は葬り去られた。今、ここにある平和や安全、自由、豊かさが実は一人の野望によって破壊される非常に儚(はかな)いものであり、人知れず自らの本分を果たす多くの人々の努力と犠牲の上に成り立っていることが改めて示されたのだ。

今回、安倍元首相の命を奪った挑戦に対し、政府と各政党は、民主主義の根幹たる自由選挙を守り抜いた。その貴重な選挙を通して国民の信託を受ける125人は、今度は、全国民を代表して国政の審議に当たる、国会議員としての本分を果たすべきだ。

日本は今、厳しさが増す安全保障環境、少子高齢化、経済・科学技術の地盤沈下など大きな国難に直面している。大型災害や新型コロナの感染症などへの脆弱(ぜいじゃく)さも露呈した。それらを克服できる新しい日本の国創りを進めなければならない。

その一丁目一番地が憲法改正だ。これは国会の専権事項で、政府は推進できない。安倍元首相の下で行われた2016年の参院選後も、いわゆる改憲勢力が衆参両院で3分の2以上を確保したが、改憲論議は進まなかった。国家と国民の将来に責任を持つ議員一人ひとりが、その見識と情熱の限りを尽くして議論を進める以外に道はない。

今回野党の挑戦を退けて、圧倒的な議席を得た自民にはその議論をリードする責任がある。それが「安倍元首相の遺志を引き継ぐ」ことにもなろう。一層の奮起を促したい。