混乱極めた現場 献花に訪れる人も
参院選の投開票を2日後に控えた8日、奈良市内で街頭演説中だった安倍晋三元首相が男に銃撃され、命を落とした。「ドン、ドン」。立て続けに銃声が響き、聴衆から悲鳴が上がった。「選挙にも影響が出るのでは」。民主主義の根幹を揺るがす白昼の凶行に、市民や関係者は憤りをあらわにした。
安倍元首相の演説を聴いていた奈良県在住の男性(48)は「銃声はバズーカのようなボーンという音だった。爆発音に近かった」と話し、「すぐSP(警護官)が取り押さえに行った。あっという間の出来事だった」と声を震わせた。犯人が安倍氏の後ろから近づく様子も目撃していた。誰かが来ると思った瞬間、「音が2発響いた」という。
「救急車呼んで!」「看護師の人いますか」。事件当時、現場は混乱を極めた。助けを求める声が響く中、女性が懸命に心臓マッサージをしたり、近くの銀行から持ってきた自動体外式除細動器(AED)での救命措置が行われたりした。男性も近くのクリニックに医者を呼びに行ったという。
同じく事件を目撃した大阪市阿倍野区の男性(57)は「爆竹などの妨害かと思った。白い煙が大きく広がっていた」と振り返った。事件の瞬間も携帯のカメラで撮っていたといい、「安倍さんは国民の生命と財産を守る使命感を持っていた。この事件は日本国に対する挑戦だ」と声を荒らげ、目に涙を浮かべた。
事件後に様子を見に来た現場周辺に住む男性(70)は「奈良でこんな事件が起きるなんて信じられない。許されないことだ」と憤りをあらわにした。
事件現場に献花で訪れた20代の男性は、「日本のために頑張ってくださった元総理の元に駆けつけるのは当然だと思った。ただ、ご冥福を祈るだけだ」と声を詰まらせた。
このほかにも多くの人が献花に訪れ、手を合わせたり、悲しそうな表情で現場を見詰めたりしていた。