元首相への銃撃事件に衝撃 米国 在任中「安保政策に劇的変化」

2019年5月当時、笑顔でゴルフに臨むトランプ米大統領(左)と安倍晋三首相=千葉県茂原市(AFP時事)

【ワシントン山崎洋介】安倍晋三元首相の銃撃事件に米国でも衝撃が広がった。ホワイトハウスは8日の声明で、「日本の安倍晋三元首相に対する暴力的な銃撃について聞いてショックを受け、悲しんでいる。われわれは報道を注視し、元首相の家族や日本の方々に思いを寄せている」と述べた。米メディアは、銃犯罪がまれな日本で起きた元首相への銃撃事件を驚きをもって大きく報じた。

CNNテレビは、「銃犯罪率が世界で最も低い国の一つにおける衝撃的な暴力行為」と強調。ABCテレビは「日本の銃規制法は世界で最も厳しいものの一つであるため、銃による暴力は非常にまれだ。拳銃は禁止されており、ハンターは訓練と身元調査を経て、散弾銃と空気銃の所持を許可されている」と説明した。

安倍氏と親密な関係だったトランプ前大統領は安倍氏の死去が伝えられる直前に「私の、そしてもっと重要な米国の真の友人であった。これは、彼を愛し、称賛していた素晴らしい日本の人々にとって、とてつもない打撃だ。われわれは皆、シンゾーと彼の美しい家族のために祈っている!」と自身が立ち上げたインターネット交流サイト(SNS)に投稿した。

ABCは「2016年にトランプ氏が大統領選に当選した後、最初に会った外国指導者が安倍首相だった」と指摘。両首脳が、合計14回の公式会談を行い、共に5回ゴルフをプレーした「ゴルフ仲間」であったと伝えた。

在任時の取り組みとして、CNNは「安倍元首相は、防衛費を増大させ、日本の安全保障政策における過去70年間で最も劇的な変化を押し進めたことで記憶されるだろう」と指摘。その上で「15年に政府が平和主義憲法の再解釈を決定し、自衛隊が第2次世界大戦以来初めて条件付きで海外戦闘に従事することを可能にした」と伝えた。

また「退任後も、安倍元首相は与党自民党の最大派閥の長であり続け、党内で影響力を持ち続けた。より強力な安全保障政策のための取り組みを続け、昨年は台湾の民主主義を守るために同盟国からより大きな貢献を呼び掛け、中国の反発を招いた」と報じた。

ニューヨーク・タイムズ紙は、安倍元首相の在任時の「最も重要な取り組み」として、15年に抗議活動や野党の反発を受けながら、集団的自衛権を行使できる法案を通したことだとした一方、「第2次世界大戦後に米国の占領者によって制定された日本国憲法の戦争放棄条項を改正するという長年の夢は実現できなかった」と、志半ばであったことを伝えた。

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