世界日報の読者でつくる世日クラブ(会長=近藤譲良(ゆずる)・近藤プランニングス)の定期講演会が6月25日、動画サイト「ユーチューブ」の配信を通じて行われ、理学博士で札幌医科大学名誉教授の高田純氏が「日本を標的とした核ミサイル~国防の課題と国内脱原発派の工作~」と題して講演した。高田氏は「できるだけ早く原子力潜水艦を開発し、国防技術の国産化比率をアップさせるべきだ。核攻撃されたときの反撃能力を持たないと、広島や長崎のように撃たれっぱなしになる」と訴えた。以下は講演要旨。(敬称略)
原潜など独自の核抑止力を核反撃能力が国を守る
反原発工作がエネルギー危機招く
国防の話題で、反撃力を持つという言葉が国民に届き始めている。核シェアリングという言葉も出てきているが、核の国産化が日本の力になるのであって、他国に依存するのは異常だ。そういった核の先端技術は日本にはあるし、最初から共有という言葉が出てくるのはよくない。
外交力だけで国を守れるのなら、ウクライナも侵略を受けなかった。そもそも日本に外交力があるのか。プーチンと交渉するようなこともせず、やったのはロシア大使館の職員に国外退去命令を出したことだけで、対話は一切ない。これは政治不信になってもしょうがない。そこで与党や野党に風穴を開けたいと、新党がどんどん出てきている状況だ。
それでも日本に敵基地攻撃能力を持たせないとする政治勢力は多く、政権内でも公明党が反対している。去年の自民党の総裁選では、河野太郎氏も敵基地攻撃に反対していた。岸田首相も検討だけで実行はしていない状態だ。
ウクライナでの戦いを見ても、敵地から発射されるミサイルに対して有効なのは地下シェルターだ。世界の普及率を見ると、スイスやイスラエルは100%、米国は82%、ロシア78%、シンガポール54%だ。専守防衛と言っている日本になぜ地下シェルターがないのか。国民の保護くらいすべきだろう。
現在、日本を取り巻くロシア、中共、北朝鮮の核武装により、相対的に米国の核の傘の力が低下している。日本は独自に核抑止力を持たないといけない。有効な抑止力として、原子力潜水艦から発射する小型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)がある。空母から戦闘機で核を撃つ方法もあるが、空母は撃沈リスクがあり、実際にウクライナが発射した対艦ミサイルによってロシアの旗艦が破壊されていた。
最大タクラマカン砂漠まで飛べる中距離ミサイルを搭載した原潜を、日本近海に数カ月の長期間潜航させて日本を守る。これで日米同盟の抑止力は増強されるので、早く討議を日米間で進めていくべきだ。
日本には既に潜水艦の高い技術力があり、船舶用の小型原子炉開発の経験もある。発電用の小型モジュール原子炉も世界トップレベルの技術力で、さらなる小型化も日本企業が続けている。原潜のゴーサインが出れば、数年で開発できるだろう。それくらい日本には、国と民間で核技術の専門家がたくさんいる。
しかし、原子力発電所を停止させてから、だいぶ時間が経(た)ってしまった。西日本を中心に再稼働しているが、日本の優れた核技術の停止を目論(もくろ)む人々がいる。
新型炉を開発せず、今ある原子炉の寿命がきたら、そのまま廃炉してしまおうという話もあるが、それだと未来永劫(えいごう)に日本は核への抑止力を持てなくなってしまう。新型炉開発や使用済み核燃料の地層処分への反対は、結局のところ日本の核武装に反対している勢力だ。
日本国内には非核工作を行う人々がいる。国内に潜入して破壊するギリシャ神話の「トロイの木馬」というべき人々だ。野坂参三氏のようにソ連の手先となって日本の核武装を阻止する運動を行っていたスパイが政治家にいたし、日本で反核運動をしながら中国の核武装を絶賛する大江健三郎氏のような知識人もいた。自民党内部でも利権がらみなどで、脱原発政策や核燃料サイクルをやめさようという令和の反核運動が起きている。
福島の原発事故後、民主党政権時に脱原発工作が行われたが、これが今のエネルギー危機を招いている。そして同時に非核三原則の維持を狙い、結果として成功してきた。これも「日本のためになっている」という話をしながら、実は日本を壊す工作をしている「木馬」の一例だ。
全ての原発が停止されたことで電力が不安定になり、電気代が高騰し製造業が困難になると、民主党政府は電力不足をソーラーパネルで補おうと騒ぎ出した。そのパネルは中国から購入しており、やはり利権が絡んでいる。結果、今年5月の段階でもともと60基あった原子炉は24基に廃炉命令が出され、規制委員会に再稼働が認められた原発が10基。実際に稼働しているのは4基だけ。規制委員会の初代委員長は、民主党の推薦で決まった反核運動家の学者だった。
2018年9月には北海道で地震が起き、火力発電所で火災が発生して大停電となった。数日間の停電で、自宅療養していた人も亡くなった。今、東京で大停電が起きたらどうなるのか。病院の自家発電が若干ならできるだろうが、長くは持たない。首都直下型地震などが今起こってしまえば、相当な人が亡くなってしまうだろう。電力不安定には、そういったリスクがある。
熱海の土石流災害は盛り土が原因と言われているが、崩落した谷面にはメガソーラー建設地が隣接していた。しかもソーラーパネルがある尾根と盛り土のあった土地の所有者は同一人物だった。この乱開発を見て見ぬふりをしていた県や市の責任は大きい。
さらに東京都では都内の新築住宅でソーラーパネル設置を義務化しようとしているが、ソーラーパネルにはさまざまなリスクがある。夜はもちろん朝夕の時間帯、雨が降っては発電できないので発電時間がかなり短い。台風や雷、ひょうなどに弱く、配線が傷付いた状態で発電を始めてしまうと電気火災の発生にもつながる。
山口県などでは上海電力日本株式会社というところが、メガソーラーの乱開発を進めている。米軍基地の近くに造られている所もあり、軍事的にもあってはならないことだ。ソーラーパネルの75%が中国製であり、しかもウイグルの強制労働問題も関わっているとされている。こういう中国ビジネスを排除しようと手を打ってきたのがトランプ前米大統領だ。バイデン大統領も中国製品をブロックするため、ウイグル自治区の製品の原則輸入禁止という法律を成立させた。日本政府もこれに準じた対応をしてほしい。
私の提案として、2050年ごろに電力のうち55%を原子力エネルギー、20%を化石エネルギー、10%を水素エネルギーで賄い、水力や太陽光、風力などの自然エネルギーで15%を占めたらいいのではと考えている。特に日本の水素製造用に開発した高温ガス原子炉技術は世界的にトップクラスだが、この技術も中国が盗もうとしているので注意が必要だ。