
「埼玉を一つ一つ変えてきた自信がある」
6月25日、影一つない昼下がりの浦和駅前。誰よりも日焼けした顔の無所属現職・上田清司がビールケースの台に上った。衆院議員を10年、埼玉県知事を4期16年務めた実績を挙げながら、74歳とは思えない力強い声で訴えた。
2019年10月、国民民主党参院議員だった大野元裕の県知事選出馬に伴う参院補選で、与野党の支援を受け当選。国会では国民と無所属の議員から成る参院会派に所属し、今回も国民、連合埼玉の推薦を受けて再選を目指す。
憲法9条への自衛権の明記を主張するなど政策は保守寄り。無党派層を中心に支持を広げており、選対関係者は「手応えはある。公明に行くはずの自民票も流れてくるだろう」と読んでいる。
埼玉選挙区は改選議席が4に増えた19年参院選では自民、立憲民主、公明、共産の4党が議席を分け合った。今回は「無所属」上田が安定した戦いを続けるとともに、全国政党化を目指す日本維新の会の勢力拡大もあって、4党とも警戒感を強めている。
自民は県連に2人目の候補擁立を模索する動きがあったが、参院議員会長を務める現職・関口昌一のみを公認した。16年の選挙で約90万票を得てトップ当選した関口は、猛暑にもかかわらず、県内15衆院小選挙区を1日ずつ小まめに回って、必勝を期す。
加えて公明現職の西田実仁を自民が推薦し、与党で2議席確保を目指す。選挙戦序盤から、首相・岸田文雄のほか外相・林芳正が応援に入り、「軽減税率の立役者」などと党税調会長としての実績を持ち上げた。選対関係者は「他から票が流れてくることはない」と、組織票固めに拍車を掛けている。
埼玉は立民の前代表・枝野幸男のお膝元だ。今回、枝野の元秘書の新人・高木真理が出馬。さいたま市議、県議を19年務めたが、全県的な知名度は高くない。選挙戦前半は立民候補としての認知度を上げる戦いに徹し、枝野も頻繁に応援に入った。少人数の前でもマイクを握り、高木について「25年以上暮らしの声を最前線で聞いて政治につなげてきた」と紹介した。
19年の参院選では立民候補が約54万票で2位当選したが、高木陣営は共に連合から推薦を受ける上田、与党に不満を持つ共産候補や維新候補への票の流出を警戒。「前回(19年)以上にきちんと票を取っていく。最低50万、目標は60万」(選対関係者)と意気込んだ。
19年の参院選では4番目で当選した共産は新人・梅村早江子を立て議席獲得を目指す。6月25日に大宮駅で演説した梅村は「改憲勢力に議席を渡してはならない」と声を張り上げた。応援に駆け付けた党委員長の志位和夫も「埼玉の底力を出せば絶対勝てる」と聴衆を鼓舞した。
新人・加来武宜を擁立した維新は、昨年の衆院選で埼玉から2人を国政に送り出しており、来年4月の統一地方選もにらんで地域に根差した地道な活動を展開している。自民関係者は「今回はまだ厳しいだろうが、3年後は戦えるのでは」と警戒する。(敬称略)
(辻本奈緒子、竹澤安李紗)
(終わり)
❶京都 維新参入で危機感強める立共 【連載】’22参院選 注目区を行く(1)
https://www.worldtimes.co.jp/japan/20220629-163010/
❷沖縄 オール沖縄に陰り、自民総力戦 【連載】’22参院選 注目区を行く(2)
https://www.worldtimes.co.jp/japan/20220630-163037/
❸北海道「2議席」めぐり自民・立民激突 ’22参院選 注目区を行く(3)
https://www.worldtimes.co.jp/japan/20220701-163054/
❹神奈川 自公堅実、一本化不調響く立民 ’22参院選 注目区を行く(4)
https://www.worldtimes.co.jp/japan/20220702-163090/
❺東京 残る1議席めぐり激戦続く 【連載】’22参院選 注目区を行く(5)
https://www.worldtimes.co.jp/japan/20220703-163113/
❻埼玉/上田、維新票の動き警戒する公・共 【連載】’22参院選 注目区を行く(6)https://www.worldtimes.co.jp/japan/20220704-163119/