史上最短で梅雨が明けた東京選挙区。連日の猛暑の中、総勢34人が６議席をかけて熾烈（しれつ）な戦いを繰り広げている。
２０１３年以降２議席を守ってきた自民党は、中川雅治の引退に伴い、タレントの生稲晃子を擁立。現職の朝日健太郎と共に２議席死守を目指す。朝日の選対幹部は「自民は１６０万～１７０万票をうまく配分できれば（２議席取れる）。変な逆風も吹いておらず障害もない。粛々と行えばいい」と冷静だ。
６月25日、ＪＲ吉祥寺駅前の街頭演説で、首相の岸田文雄が「私を超える『聞く力』で国政に（有権者の）思いを届けてくれる」と太鼓判を押した生稲は知名度の高さが売り。「１９１７（いくいな）」と書かれたピンクのシールを服に貼り付けて応援する支持者や、ファンとみられる人々も押し寄せ、駅前は身動きが取れなくなった。
10年と16年の選挙で１００万票超えのトップ当選を果たした立憲民主党現職の蓮舫は自身の演説はそこそこに、全国の応援に飛び回る。25日にＪＲ錦糸町駅で比例代表の辻元清美と共にマイクを握ると、「（岸田政権は）物価対策にはあまりにも鈍感だ」と得意の辛口批判で聴衆を沸かせた。
立民は新人の松尾明弘を立てて２議席目を狙うが、組織票を松尾に振り分けて後押しするものの、苦戦を強いられている。選対関係者も「知名度不足が痛い。（共産やれいわとの）政策の違いを訴え浮動票を集めたい」と険しい顔で語った。
３期目を目指す公明党現職の竹谷とし子は前々回、前回と80万票近くを獲得。支持母体である創価学会の組織力も強く、安定した戦いを続けている。
消費税の減税や憲法改正反対などを掲げ再選を狙う共産党現職の山添拓は、革新系浮動票がれいわ新選組元職の山本太郎に流れることも念頭に「自分は当落ライン上」と訴え、組織票固めに余念がない。支持者の高齢化が目立つ共産だが、16年の選挙では山添が約66万票を取っており、支持票を手堅く固めるのが課題だ。
各種世論調査の情勢分析では、朝日、蓮舫、竹谷、生稲を山添が追う展開で、残る１議席を懸けた争いに注目が集まっている。
13年に抜群の知名度を武器に66万票を得て４位当選したれいわの山本は、党代表として多くのメディアに出演して「消費税廃止」を訴え、他党と差別化を図る。音楽を流しながら街頭演説し、「盆ダンスパーティー」（25日、ＪＲ秋葉原駅前）などイベントも盛り込んで、若い世代への支持拡大を狙う。組織力は劣るが、「都議や区議の仕事はボランティアが十分まかなっている」（関係者）と強気だ。
「全国政党化」を目指す日本維新の会にとって、19年に１議席を得た首都・東京も負けられない「最重点区」だ。新人の海老沢由紀は知名度は劣るが、東京で子供４人を育てながら、大阪市議として教育無償化などに取り組んだ実績をアピールしている。党副代表で大阪府知事の吉村洋文をはじめ党幹部も頻繁に応援に入っており、選対関係者は「３年前よりも選対の雰囲気も有権者の反応もいい」と手応えを口にした。
東京都知事の小池百合子を支える地域政党が母体の「ファーストの会」新人・荒木千陽は、小池が公示直前から連日のように応援に出向き、国民民主党代表の玉木雄一郎もしばしば加わり「選挙区は荒木、比例代表は国民民主」と訴えたが伸び悩む。自民に次ぐ都議団があっても「（都民ファの）都議たちは一枚岩ではない」（選対関係者）。小池の側近で都民ファ副代表の千代田区長・樋口高顕が自民・生稲支持を表明するなど、足元が揺らいでいる。（敬称略）
（川瀬裕也、村松澄恵、大西洋輝）
❶京都 維新参入で危機感強める立共 【連載】’22参院選 注目区を行く（１）
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❹神奈川 自公堅実、一本化不調響く立民 ’22参院選 注目区を行く（4）
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