北海道「2議席」めぐり自民・立民激突 ’22参院選 注目区を行く(3)

参院選必勝を期して気勢を上げる支持者たち=6月22日、札幌市中央区(一部画像を処理しています)

 「『一日でも早く国政に復帰して』という激励を受け、衆院選1区から参院選に転じた。何としても国政へ送ってほしい」

 こう叫ぶのは、自民党新人の船橋利実。6月22日の公示日、久しぶりによく晴れた初夏を彩る札幌大通公園での第一声演説会には道内選出の自民国会議員の他、日本維新の会(参院議員)の鈴木宗男と公明党(衆院議員)の稲津久が応援に駆け付けた。

 鈴木は「維新から北海道選挙区に候補者を出してもよかったが、北海道経済の安定・日本の安全保障を考え、身を引いて船橋候補に全面協力する」と表明。稲津も船橋の支援を約束した。

6年前から改選数が3に増えた北海道では今回、自民、立憲民主、国民民主、共産、NHKの各党候補を含む12人が立候補しているが、実質的には自民2人と立民2人の戦いだ。各種世論調査では、自民現職の長谷川岳が一歩リードし、立民新人の石川知裕、船橋、立民現職の徳永エリの3人が激しく2議席を争っている。

自民の悩みは、全道で後援組織を固めて3選を目指す長谷川が「票を取り過ぎる」恐れがあることだ。6年前の参院選で長谷川は65万票近くを得てトップ当選したが、もう一人の新人候補は8441票差の次点となった。2人の合計得票は約113万票で、2人が当選した旧民進党の合計得票(約105万票)を超えていた。「票の配分」のミスを悔しがる声が上がったのは当然だ。

今回、公募で選ばれた船橋は衆院議員を2期務めたが、札幌市を地盤としており、全道的な知名度が低い。そのため党内には「6年前のようなことが起こらなければいいが」という声が出ている。党本部が経済界や業界団体に働き掛けて票の調整に動いたが、これには長谷川陣営が反発。「中央の強引なやり方には納得できない」と不満を顕(あら)わにする。

今回船橋支持を表明した道内30万といわれる鈴木支援票と同じく30万票と言われる公明票がどれだけ船橋に向かうかも焦点となりそうだ。

立民も票割りの問題を抱えている。当初、立民は国民の支援が得られれば石川を無所属として推薦を出し、連合北海道が推薦する徳永を公認する方針だった。

ところが国民が4月になって党北海道代表の臼木秀剛を独自候補として出馬させることを決定した。立民は急遽(きゅうきょ)、石川も公認し、「2議席」を目指すことになったが、連合が臼木も推薦したため、徳永の組織票が分散。また、石川は連合の推薦を得られなくなった。

石川に対しては序盤から衆院議員の小沢一郎(6月25日)や参院議員の蓮舫(同26日)が相次いで札幌を訪れ、「北海道は食の宝庫、食料の安全保障、子供の安心・安心など山積する課題に石川を国政に送ってほしい」(蓮舫)などと援護射撃をして盛り上げている。

北海道では2議席を確保して保守安定を図りたい自民と、こちらも2議席を奪還して革新の牙城を再構築したい立民との妥協を許さない戦いが続いている。(敬称略)

(湯朝 肇)

❶京都 維新参入で危機感強める立共 【連載】’22参院選 注目区を行く(1)
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❷沖縄 オール沖縄に陰り、自民総力戦 【連載】’22参院選 注目区を行く(2)
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❸北海道「2議席」めぐり自民・立民激突 ’22参院選 注目区を行く(3)
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❹神奈川 自公堅実、一本化不調響く立民 ’22参院選 注目区を行く(4)
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❺東京 残る1議席めぐり激戦続く 【連載】’22参院選 注目区を行く(5)
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❻埼玉/上田、維新票の動き警戒する公・共 【連載】’22参院選 注目区を行く(6)https://www.worldtimes.co.jp/japan/20220704-163119/

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