国家存亡の岐路の自覚を

特別編集委員 藤橋 進

第26回参院選が22日公示され、第一声を上げる自民党総裁の岸田文雄首相 =22日午前、福島県福島市

今も激しい戦闘が続くロシアのウクライナ侵攻。そのさなかでの第26回参議院選挙の公示だ。ウクライナでの悲劇は、連日テレビその他で生々しく伝えられている。ロシアの艦艇が日本近海を航行し威嚇している。東アジアの安全保障環境を考えれば、決して対岸の火事とは思われない。

しかし先日、公示を前に行われた党首討論では、専ら現在の物価高に議論が集中し、安全保障問題はやや後方に押しやられた。選挙では外交・安保問題はあまり得点にならない。直近の世論調査でも、外交・安保への国民の関心は高くはない。

大抵の国民はまず当面の生活を第一に考えるから、それもやむを得ないだろう。しかし、国民に代わって、大局的で長期的な見地から問題に取り組むのが政治家、国会議員の役割だ。

とりわけ「良識の府」と言われる参議院はより大所高所に立って国の未来の方向性を示す役割がある。直面する物価高への対応を論じつつも、国の命運を左右する安保問題を最大の争点とすべきだ。

ロシアのウクライナ侵攻ではっきりしたのは、抑止力がなければ平和は維持できないということだ。ウクライナがNATO(北大西洋条約機構)の一員であるか、あるいは核兵器を保有していれば、さらにバイデン米大統領が早々と不介入を宣言しなければ、ロシアの侵攻はなかったというのは多くの専門家が指摘するところだ。

岸田文雄首相は、日米安全保障条約による「拡大抑止」を強調した。もちろんそれが基本だが、自分の国は自分で守る努力、侵略に対し命を懸けて戦う国民なくして、どの国が自国民の命を犠牲にしてまで助けに来るだろうか。抑止力を強固にするためにどうすべきか、憲法改正にも踏み込んで、真剣な論戦を期待したい。

人口減少、少子化も待ったなしの危険水域に近づいている。昨年生まれた子供は81万人にとどまり、出生率は1・3だった。これまで政府もさまざまな手を打ってきたが、どれも功を奏したと言えない。この流れを止めることができなければ、いずれ地方は消滅し、日本人はこの列島から消えてしまうだろう。これまでの少子化対策とは次元の違った大胆な施策が求められている。

安保問題、少子化問題は、新型コロナ禍以上に深く本質的な国難である。いま有効な手を打たなければ、手遅れとなりかねない。国家と民族の存亡の岐路に日本は立っている。この選挙には政治家も有権者も、政権選択以上の国運選択選挙として臨むべきである。