現実直視し防衛力強化を【連載】’22参院選 選択の焦点(上)

深刻な中国の軍事的脅威

参院選挙は政権選択の選挙ではないが、ロシアのウクライナ侵略によって国際的な経済・安保環境が激変する中で行われる今回の場合は今後、最長3年間の国政の方向を決定する重大な選挙だ。その選択の焦点を探った。

外交・安全保障

ロシアによるウクライナ侵攻や、北朝鮮の核・ミサイル開発、中国の台湾・尖閣諸島への軍事的圧力など、日本を取り巻く安全保障環境はより一層厳しさを増しており、自民党の高市早苗政調会長は、今回の参院選について「あえて争点を一つ挙げるとすれば外交・安全保障になる」と述べた。

岸田文雄首相が先月の日米首脳会談で「相当な増額」を表明した防衛費について、自民はNATO(北大西洋条約機構)諸国が目標とするGDP(国内総生産)比2%を念頭に「来年度から5年以内に必要な水準を目指す」と明記。だが公明党は「予算額ありきでなく、真に必要な予算を確保する」にとどめ、トーンの違いがにじむ。

防衛費について野党は割れている。「積極防衛能力」の整備を掲げる日本維新の会と、「自分の国は自分で守る」と唱える国民民主党は増額を掲げる一方で、立憲民主党は専守防衛の範囲内で防衛体制の強化を図るとし、「総額ありきではなく、メリハリのある予算で」と増額論に与(くみ)しない。かつて党幹部が防衛費を「人を殺すための予算」と呼んだ日本共産党は「軍事費2倍化は許さない」と叫んでいる。

反撃能力(敵基地攻撃能力)保有をめぐる論議でも顕著な、このような各党の姿勢の違いは、日本の置かれた安保環境の深刻さに対する認識の違いからきている。日本の安保環境はNATO諸国よりも厳しい。ロシアの軍事侵攻に注目が集まる中、中国は南太平洋への軍事的な進出を強めるなど、習近平主席が「歴史的任務」と呼ぶ台湾統一(侵攻)への布石を着々と進めている。台湾有事は間違いなく、尖閣や与那国など日本の有事であり、その対処に向けて一刻の猶予も許されない。防衛費は単にNATO諸国の基準に合わせるというのではなく、日本を守るために真に必要な予算を積み上げていくべきだ。

日本防衛の基軸が日米同盟であることは共産などを除き、誰もが認めるところだ。ところが立民は公約で、沖縄県・普天間飛行場の移設計画について「辺野古新基地建設中止」を表明し、現在の日米同盟の基礎となっている安保法制についても「違憲部分を廃止」するとしている。日米同盟を大きく揺るがせかねない内容を掲げながら果たして公約の「日米同盟を基軸とした防衛戦略」が描けるのか。

同じく安保法制に反対する共産の志位和夫委員長は党首討論会で「軍拡で平和が守れるのか。日本が軍拡で構えれば、相手も軍拡をする悪循環だ」と発言している。中国の国防費は非公表の予算を含め約30兆円に上るといわれる。中国がこれだけの軍拡を進める中で、日本の防衛費増にブレーキをかけることで、本当に安全が守れるのか。

日本が「第二のウクライナ」とならぬよう、各党は現実を直視し具体的な議論を展開し、防衛力の強化を進めてもらいたい。(川瀬裕也)

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