遠い理想社会 疑問だらけの未来社会論

【連載】日本共産党100年 第1部 問われる「革命」路線(6)

「世間から白い目で見られながらも共産党に入党する、それは社会主義革命を行って、一切搾取のない、すべての人が平等な社会を作れるという希望を持てるからだ」

昨年秋の衆院選で「政権選択の歴史的な選挙」と訴えて敗北した志位和夫委員長

元政策委員長の筆坂秀世氏もそういう熱い思いを抱いて若い共産党員になった一人だ。当時の綱領(1961年綱領)は、ソ連を中心とする社会主義の世界体制が「人類社会発展の決定的要因になりつつある」とし、「世界的規模では帝国主義勢力にたいする社会主義勢力の優位…がますますあきらかになっている」と謳(うた)いあげていた。

ところが、社会主義を標榜(ひょうぼう)したソ連・東欧諸国は既に崩壊し、共産中国も覇権主義を強め、社会主義の理想国は現実世界に存在しない。いまや社会主義革命の文字は綱領になく、理想とする未来社会論は疑問だらけだ。これでは若者を引き付ける魅力はない。

しかし、不破氏にとっては違うようだ。「人間社会の歴史の大きな転換の時期、未来社会の足音の聞こえる時代に生きている」という。志位氏も、旧ソ連と中国は「革命の出発点が、遅れた状態からの出発だった」ことから「社会主義とは無縁の誤りに陥った」とし、「自分たち日本でこそマルクス・エンゲルスの世界を実現する。その世界史的挑戦を日本が行っているのだ」と意気軒高なのである。

だが、まず疑問なのは、理想の社会という「社会主義・共産主義社会」のイメージが湧いてこない。この社会への前進を図る決定的な課題が「社会主義的変革」の実現だとし、その中核に据えられている「生産手段(工場、機械、土地など)の社会化」こそが決め手になると言うのだが、どう社会化するのか、その具体像が明らかにされていない。マルクスが「未来社会の青写真を描くな」(『ゴータ綱領批判』)と言っているから描かないというが、これで革命路線を「科学の目」でとらえているなどと言えるのか。

志位委員長は、また、人間社会の本来の姿を取り戻すために「自由」の大切さを強調し、未来社会の最大の特質が「人間の自由で全面的な発展」にあると語る。そのためにも「生産手段を社会化」して労働時間を抜本的に短縮する。それによって「自由」を得て、人間自身の自己変革につなげていくという。だが、果たして、すべての人間がそのことだけで利己心や愛憎の問題などを克服し、良心的な人間に生まれ変わることができるだろうか。その克服の仕方に説得力がない。

そして、「日本国民の英知と創意によって解決しながら進む新たな挑戦と開拓の過程となる」というが、国民の努力が足りなければ未来社会の到来は22世紀になるかもしれないという。不破氏には「未来社会の足音」がどう聞こえているのか。

22世紀というのでは、今生きているほとんどの人は実現できたのか否か証明できない。それで「未来社会論」は力を持てるのか。「マルクス以来の共産主義理論の終焉を示しているのが理論的進化の止まった現在の日本共産党だ。それを象徴しているのが理論なき最高幹部としての志位、小池(晃書記局長)である」と元党員の篠原常一郎氏は語る。

自分たちが信じる日本独自の「社会主義・共産主義の社会」をつくっていきたいとしているが、それなら、世界制覇のためにコミンテルンが日本に産み落とし命名した「日本共産党」という党名を、創立100年の節目に変え、新たな出発をしたらどうか。7月の参院選の結果がその判断材料になるはずだ。

(日本共産党100年取材班)(おわり)

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