志位委員長の著書『新・綱領教室』は、「しんぶん赤旗」の新入局員に行った講義を基にして編集したためか、上下巻全5章あるうちの第1章のほとんどを、「しんぶん赤旗」の前身で戦前の非合法機関紙「赤旗(せっき)」の自慢話に費やしている。
志位委員長によると、「赤旗」は「侵略戦争に反対し、平和と民主主義のために勇敢にたたかいぬいた不屈の記録」であり、「反戦平和の論陣をはり続け」たことは、「ひとり『赤旗』の名誉にとどまらず、日本のジャーナリズムの歴史に記録される誇るべき偉業となった」という。さらに、「戦前のたたかいは歴史によって試され、歴史が決着をつけた」と決め付けているのである。
だが、当時の「赤旗」をめくっても「平和」の文字は見当たらない。では「反戦」の党だったのか。1931年6月15日付は、「帝国主義戦争を自国ブルジョアジーに対する内乱に転化せよ」とか「祖国ソヴエート同盟を守れ」「支那革命を守れ」といったスローガンが目立つように掲載している。
「国際共産党の日本支部としての義務の完全なる遂行のために戦わねばならない」(「赤旗」34年3月1日)と自覚していた共産党は、日本軍が大陸に乗り出していく動きを警戒し、ソ連を守れ、中国共産党の革命の成功を支援せよと訴えるとともに、日本国内を内乱(内戦)に向かわせてクーデターを起こし「天皇制」を打倒するために「戦争」を利用していたのである。それがコミンテルンから与えられた綱領的文書『三二年テーゼ』の軍事闘争方針だったのだ。
そのために、共産党は大量の武器を購入。その資金調達として銀行襲撃ギャング事件を引き起こしたりもしていた。戦後、40年間、党のトップとして指揮した宮本顕治氏によるリンチ殺人という陰湿な事件も起こした。
「ジェンダー不平等・日本」の根っこの一つは戦前にある、としてその歪みを正すため女性を大切にする「先駆的たたかい」をしてきたのが共産党だとも宣伝している。しかし、『日本共産党の研究』(二、立花隆著)は、色仕掛けによる大口資金獲得の具体例を「東京朝日(昭和8・1・18)」の記事を引用して紹介したり、美人局事件で脅し取った話や「良家の子女をアジって、家の金や株券などを持ち出して家出させるのが共産党の資金かせぎの手段の一つであった」などと詳細に記している。
表では1932年7月15日付の「赤旗」に「婦人欄」を付録として付けたりして「女性の権利を守る」戦いをしてきたと主張しても、裏では女性を使って革命資金を不正に集めていたというのでは「党の道徳的信頼を破壊する悪辣な謀略」と政府批判をしても説得力を持たない。
「歴史の真実を塗り替え粉飾し、それを前提とした新綱領路線になっている」と元共産党国会議員秘書を務めた篠原常一郎氏は断言する。「戦前のたたかい」は「歴史が決着をつけた」というが、未決着である。
(日本共産党100年取材班)
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