
日本共産党が7月15日で創立100年を迎える。共産主義の“祖国”ソ連が世界を支配するために組織したコミンテルン(国際共産党、第3インターナショナル)の日本支部として誕生した。それから100年。到達点である今日の党は、違憲自衛隊の活用論や「天皇制」の容認などを主張。ソフト戦術を連発し野党連合政権を、と唱えている。しかし、志位和夫委員長の掲げる「革命」路線の先に未来はあるのか―。(日本共産党100年取材班)
志位委員長は4月13日、国会内で『新・綱領教室』(上、下)出版の発表記者会見を行った。2004年に大幅に改定した綱領と、2020年に開催した28回党大会で一部改定した綱領や、ロシアのウクライナ侵攻などの最新情勢をまとめて解説したもの。7月投開票の参院選で国民への理解を広げ「躍進」を果たすことを期すとともに、野党共闘への吸引力を強めるのが狙いだ。
党創立100周年の22年までに「野党連合政権と党躍進を実現する強く大きな党の建設」を目指すとの決議を採択している共産党は、野党共闘を通じての「野党連合政権」樹立を「諦めるつもりはない」(志位委員長)という。ただ、昨年10月の衆院選で、立憲民主党と初めて政権枠組みの合意を結んで挑んだが、立憲と共に議席を減らした。そのため立憲は共闘に消極的で目前の参院選ですら共闘できない選挙区が多く、年内の連合政権樹立などまったくの夢物語となっている。
共産党の政権構想の過去をたどると、一方的な乱発の歴史だった。選挙管理内閣とか暫定政権といった、いわゆる「よりまし政府」の提唱は1960年代から行ってきたが、「70年代の遅くない時期」に民主連合政権を樹立するという共産党を中心とする政権構想の時期を明示したのは、70年の夏だった。それから50年余りが経(た)っても実現の見通しはない。
不破(哲三)、志位体制になって変化したのは、80年代当時の社会党と公明党の政権合意で作られた「共産党排除の壁」が崩れてきたことだ。志位委員長は「2015年9月19日に、戦争法=安保法制廃止の国民連合政府を提唱して以来、野党が共同して新しい政権をつくろうという努力を6年半にわたって続けている」ことを「必然的発展方向」だという。「全国的規模での国政選挙での共闘・連携は、日本共産党の歴史ではおこなったことのない、史上初めての挑戦」であるとも述べ、その先にあるはずの政権獲得すなわち民主連合政府の樹立と「民主主義革命」の実現に意欲を示している。
しかし、共産党は97年の第21回党大会で「21世紀の早い時期に、民主連合政府の実現を目指す」方針を決定。当面の第1段階の目標として、「衆議院に百をこえる議席、参議院に数十の議席をもち、国会の力関係のうえでも自民党と正面から対決できる力量をきずきあげる」と数字を示した。現在の議席は、衆院が10、参院が13にすぎない。それにもかかわらず、現在も「21世紀の早い時期に、民主的な連合政権を樹立し、日本の針路を民主的・平和的な方向に切り替えることをめざして、活動している」という。だが、「早い時期」というなら、そろそろ、その時期ではないか。
立憲民主などと共闘体制を築きたい共産党は今、いら立ちを募らせながら焦りの色も浮かべている。党財政収入の9割を占める機関紙「しんぶん赤旗」の発行部数は最盛期の約350万部(1980年)から100万部を切るほどに激減し、岩井鐵也・財務・業務委員会責任者が「しんぶん赤旗」と党の財政を守ってください、とのお願い記事を同紙に大きく掲載(2019年8月29日付、21年12月22日付)するほどだ。選挙運動の手伝いの高齢化も甚だしく、党全体の力量が下降している。
日本共産党100年 第1部(1) 夢物語の政権論 「赤旗」が激減し力量下降 | The Sekai Nippo DIGITAL (worldtimes.co.jp)
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