「トキと共生する里地づくり取組地域」環境省公募 真っ先に石川県が名乗り

8月上旬に選考結果を公表

石川県能美市の「いしかわ動物園」で飼育されているトキのペア(同園提供)

国の特別天然記念物「トキ」は現在、新潟県佐渡市で飼育されているが、本州での定着を目指し、環境省はこの取り組みの主体となる地方公共団体として「トキと共生する里地づくり取組地域」を公募しているが、石川県の馳浩知事が真っ先に手を挙げた。

今月16日、環境省を訪れ、山口壯(つよし)環境大臣に対し、能登地方の宝達志水町以北の九つの市と町を、トキの放鳥の候補地とするよう申請する文書を手渡した。関係する市長や町長も同行した。

これに対して、山口壯環境大臣は「みなさんの熱意はしっかりと受け止めました。今後、専門家を交えた委員会で過去の生息実績などを踏まえて検討していきたい」と述べた。環境省の計画では、候補地は全国で3カ所程度を選び、今年8月上旬に選考結果を公表し、2026年度以降に放鳥を行う予定となっている。

馳知事は「能登地方は自然保護と開発がバランス良く進められている地域であることを理解いただいたと思う。再び能登の空にトキが飛ぶ風景を取り戻したい」と話している。

石川県とトキとのこれまでの歴史を振り返ると、能登半島が本州最後の生息地となった。昭和45(1970)年、国の指示により、本州最後のトキ「能里(ノリ)」が穴水町で捕獲され、佐渡トキ保護センターへ移送された。これで本州からトキが姿を消し、その能里も翌年、死んだ。

同56年に国内で最後まで残っていた5羽の野生のトキが佐渡で捕獲され、日本の野生のトキは姿を消した。その後、トキの人工繁殖に向かって懸命な努力が重ねられたが、思うように進まず、平成15(2003)年に日本産のトキは絶滅してしまった。

その一方で、平成11年に中国から贈られたペアによる人工繁殖が成功し、同年に、飼育下では日本初となるヒナが誕生。その後も個体数は順調に増え、令和2(2020)年9月24日時点(環境省)で、推定458羽が生息している。従って、日本に生息しているトキはすべて中国産となる。

両者にどの程度の違いがあるか、DNAを調べた兵庫医科大学の山本義弘教授の研究によると、遺伝子の違いは0・065%で、これは「個体差レベル」だそうだ。

戦後、半世紀にわたって保護活動を続けてきた村本義雄さん(97)=羽咋市在住=は、「私の子供の頃に、トキ色の羽を広げて家の上空を飛ぶ姿を見て育ったので、野生のトキがたくさん増えるといいですね」と話している。

(日下一彦)