理事長のずさんな経営浮き彫り
沖縄本島中部の宜野湾市に所在する専門学校SOLA学園(野村美崎理事長)では、2年前に理事長が交代して以降、教職員の退職が相次いでいる。十分に授業を実施できず、学園存亡の危機に陥っている。学園の経営陣に何が起きているのか。関係者らに話を聞くと、理事長のずさんなワンマン経営の実態が浮き彫りになった。(沖縄支局・豊田 剛)
備品不足で学習環境悪化
労組結成、正常化求め請願書も
SOLA学園は1990年に創設され、国際リゾート観光専門学校として開校。現在は沖縄医療工学院と沖縄ホテル観光専門学校の2校の専門学校、7学科を運営している。医療工学院は県内で唯一、救急救命を学べる救急救命学科と柔道整復を学べる柔道整復学科がある。そのほかスポーツ健康学科(整体コースとトレーナーコース)製菓製パン学科、臨床工学科がある。沖縄ホテル観光専門学校は美容学科とホテルマネジメント学科がある。留学生も含め430人の学生が在籍している。
ところが、2021年4月から22年3月までの間に少なくとも44人の職員が懲戒処分(一方的な学校側からの)や自主退職(抗議の意味を含めた)などで離職、新年度の開始時は教員不足に陥り、5月になってもカリキュラムを埋め切れず、担当教師が決まっていない授業もあるという事態に陥っている。
経営がおかしくなったのは、新しい理事長が20年に就任してからのことだ。同年5月に、理事長交代を機に学校法人の運営に当たる理事会メンバーが入れ替わった。
関係者によると、この頃から担当授業の大幅な増加、給料の大幅削減など教職員の雇用条件が職員にとって不利益な方向に変更され始めたという。教員が条件面の改善を要求すると、理事長側は校長の許可を得ないまま校長の名前を使って懲戒処分にするなどの暴挙に出た。校長も4月に入ってすぐに辞任した。
新しく教師を採用しても、すぐに辞めさせられるか自主退職するケースが多い。前の仕事を辞めて教員になったものの、わずか1カ月で辞めた人もいたという。月給が7万円程度も削減されたケースもある。
野村理事長は就任するとすぐ、県庁に中国のマスクを寄贈したり、市町村にフェースシールドを寄贈するなど、社会貢献をアピールしたが、肝心の学園内への設備投資に対しては配慮のなさが明らかになっている。
ある学生によると、「トイレットペーパーも補充してくれず、自分で持ち込んだこともある」と言う。「教室のブラインドもボロボロでまぶしくて授業に集中できない」「経費節減と言って日本製のユニホームから安価な中国製のものに変更させられた」など学習環境の苦情が絶えない。
そればかりではなく生徒の間からは「昨年から通年で同じ先生に教えてもらったことがない。新任の先生が、これまでどんな内容を学んだのか聞いてくる。今までの勉強は何だったのか分からない」と新旧教員間での引き継ぎすらできていない状況も明らかになっている。
野村理事長は、理事メンバーである校長にも、「何もしなくてもいい」「会議に参加しなくてもいい」と伝えた。また、理事会は、ほとんどの理事が委任状を提出して参加しないため、一度も評議会が開かれなかったという。
こうした苦情や問題が絶えないことから、専門学校の教職員らが今年2月、労働組合を結成した。劣悪な労働環境の改善を目的として、学園に団体交渉の開催を求めている。
正常化を求める請願書はわずかの間に1000筆以上が集まった。「およそ教育機関とは言えない経営が行われています。学生の教育・学習環境は著しく損なわれ、教職員に対しても厳しい命令を乱発し、多くの教職員が処分や退職強要に追い込まれてきました」と説明し、県に対して監査と指導をするよう求めている。
学園側は、労働条件の変更内容などについて「事実関係は精査している最中」とした上で、授業については「既存の教師と新しい教師で対応できている」と説明している。これに対し、元理事の男性は、「学園を私物化している理事長夫妻が辞任しない限り、諸問題の解決はない」と断言している。