亜熱帯気候の沖縄地方には珍しい動植物が多くいるが、ミヤコカナヘビもその一つ。世界で宮古諸島だけに生息している絶滅危惧種だ。

ミヤコカナヘビという名前だが、品種はトカゲ。緑色の体色、細長い体形、自切する長い尾が特徴だ。沖縄地域に生息するカナヘビには、「アオカナヘビ」「サキシマカナヘビ」もいるが、DNAの分析からミヤコカナヘビだけが中国や台湾に生息する種を起源に持つことが分かっている。
ミヤコカナヘビは2010年代に入ってから個体数の著しい減少が指摘され、現在は宮古島市自然環境保全条例の保全種、沖縄県天然記念物、種の保存法に基づく国内希少野生動植物種に指定。環境省版レッドデータブックでは、極めて絶滅の危険性が高い絶滅危惧IA類に指定されている。
こうした中、NPO法人どうぶつたちの病院沖縄と琉球大学熱帯生物圏研究センター・戸田守准教授が高校生らとともに投稿したミヤコカナヘビの生態についての論文がこのほど、「沖縄生物学会誌」第60号に掲載された。
宮古島の高校生らが地元の高齢者から地域の昔の様子を聞き取ったところ、ミヤコカナヘビが1970年代までは身近に生息していたことが明らかになった。目撃された地域は特に、人口の少ない宮古島中央から東よりの地域で多いとの結果が出た。「遊んでいた時に見た」「自宅の庭で見た」などの回答があった。
論文によると、20年ほど前までは宮古島で日常的に見られたが、観光事業のための開発で生息域が減り、島外から持ち込まれたイタチなどに食べられたり、ペット用に乱獲されたりしたことも影響し、個体が激減している。なお、2017年からミヤコカナヘビを飼育している札幌市円山動物園は国内で唯一、繁殖に成功している。
(T)