光で描いた創造的名品群 光のメディア/東京都写真美術館

バーバラ・モーガン《ピュアなエネルギーと神経過敏な人》(左)と《マーサ・グラハム、世界への手紙、キック》

近代写真の父スティーグリッツ

光の諧調を数値化したアダムス

東京都写真美術館で「TOPコレクション 光のメディア」が開催中だ。同美術館には約3万6千点の収蔵作品があるが、写真は光に弱いメディアなので、常設展示ができず、名品を定期的に紹介するコレクション展を開催。

今回の企画は、英語のフォトグラフの語源が「光で描く」という意味であることから、記録性を超えて、創造性に焦点を当てた29人による名品約100点を展示。

企画した学芸員の鈴木佳子さんによれば、きっかけは、30年ほど前に米国の美術館やギャラリーで、アルフレッド・スティーグリッツ(1864~1946)の作品を調査したことだった。強い印象を与えたのが《イクィヴァレント》(1929年)のシリーズで、雲を被写体にした作品。多数の感覚的な要素が内包され、プリントが美しかった。イクィヴァレントとは等価物という意味で、雲の写真は作者の生の経験の等価物だという。

彼は、写真はファインアートであり、絵画や伝統的なグラフィックアートに匹敵するという信念を持ち、同志たちとグループ「フォト・セセッション」をつくって機関誌『カメラワーク』を発行。妻となった画家ジョージア・オキーフをはじめ、ニューヨークの街並みや、雲を撮影して次世代に大きな影響を与え、近代写真の父と呼ばれた。

同展は、光を表現手段とする写真の本質を再検証する展覧会で、スティーグリッツとその同志をはじめ、写真術発明者の一人フォックス・タルボットや、マン・レイ、W・ユージン・スミスから現代作家らまで、珠玉の逸品を展示している。

多くはモノクロームの作品で、その諧調が抜群に素晴らしい。アンセル・アダムス(1902~84)は米国を代表する風景写真家で、6点を展示。《エル・キャピタン滝、ヨセミテ渓谷、カリフォルニア州》(1940年頃)は、切り立った岩山の夜景だが、壮大な岩壁が、漆黒(しっこく)の空と尾根を背景に浮かび上がっている。彼は露出と現像をコントロールして数値化する「ゾーン・システム」を生み出し、黒、グレー、白と、諧調を精密に表現。そのリアリティーは光学的な正確さによるもので、目で見た風景とは違うのだという。美しい作品だ。

スティーグリッツの考えを受け入れたのがマナー・ホワイト(1908~76)だった。カトリック教徒で禅や易経、グルジェフの思想に傾倒し、やがてイクィヴァレントに出合う。

《窓枠の白昼夢、ロチェスター、ニューヨーク州》(1958年)は、カーテンが揺らいで床に不思議な影を落としている風景。光の質感が素晴らしい。「ゾーン・システム」も極めたという。

ダンサーのマーサ・グラハムを撮影して、独自の詩的世界を表現したのはバーバラ・モーガン(1900~92)だ。《マーサ・グラハム、世界への手紙、キック》(1940年)は、ダンスのクライマックスを浮き立たせるように捉えていて、絵よりもきれいだ。光の実験の果てに結実させた作品。

暗いスタジオで懐中電灯を振り回して光を捉えた《ピュアなエネルギーと神経過敏な人》(1941年)も、舞踊のような光の線と、画面隅の手のひらのコントラストが面白く、感動的だ。6月5日まで。

(増子耕一)

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