ウクライナに侵攻したロシア軍が撤退したキーウ近郊の町で、殺害された民間人の遺体が多数発見されたことが世界に衝撃を与えている。後ろ手に縛られ拷問を受けた跡が残るなど、ロシア軍の残虐行為がまたも明らかとなった。
英仏独などは「戦争犯罪」として、オランダ・ハーグの国際刑事裁判所への提訴を呼び掛けている。既にロシア軍の戦争犯罪と思われるものは病院への攻撃など数多く報告されている。
こうした蛮行は、先の大戦で日ソ中立条約を破って満州に侵攻したソ連軍が何をしたかを思えば、驚くに足りない面もある。とはいえ、80年近くも昔の悲劇を改めて思い起こさせるとは。
殺害された中には自転車に乗っていた人も多数いるようだ。さらに動物なども含まれていることから、恐怖に駆られたロシア兵が、動くものはみな敵と勘違いして闇雲に銃撃したのではないかという見方もある。パニックぶりが目に浮かぶ。
侵攻が始まってから、ウクライナ軍に比べてロシア軍の士気の低さが指摘されている。ウクライナの軍や市民が示している勇気と愛国心の強さは想像以上のものがあるが、ロシア軍の士気の低さは当然のように思える。
補給がうまくいかず、食料や燃料が不足していることだけではない。まことしやかに軍事作戦の目的を説明されたのだろうが、それでも、なぜ兄弟国の軍を攻撃し、街を破壊し、民間人を殺害しなければならないのか、納得できないものがあるはずだ。