美術の巨匠ミロが日本から受けた本質的な影響

「ミロ展-日本を夢見て」、物の見方や表現技法にも影響

美術の巨匠ミロが日本から受けた本質的な影響
美術の巨匠ミロが日本から受けた本質的な影響

スペインが生んだ20世紀美術の巨匠、ジョアン・ミロと日本との関わりに焦点を置いた「ミロ展ー日本を夢みて」が、東京・渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開かれている。ミロは若い頃から日本とその文化に強い関心を持ち、1960年代の来日は巨匠に大きなインスピレーションを与えた。

 「一枚の草の葉には、一本の木や、山と同じだけの魅力がある。原始の人々や日本人のほかは、ほとんど誰もが、これほど神聖なことを見過ごしている」とミロは手紙の中で書いている。バルセロナ自治大学のリカル・ブル准教授は展覧会カタログに寄せたエッセーで、日本的な物の見方が「彼を詩的かつ幻想的な形態へと導く、正確な描線による細かな写実表現を身につけるための鍵となった」と述べている。

 画家にとって、「どう描くか」は最重要課題である。しかし「どう見るか」も決定的に大きな問題だ。そういう意味でも、ミロ芸術にとって日本文化の影響はかなり本質的なものであったといえる。

記号的形態の誕生も、訪日がミロにとって重要な転換点に

 シュールレアリスムの代表画家と大ざっぱに紹介されるミロだが、この括(くく)りは、ミロの世界を狭くしてしまう。ミロ独特の様式においては、記号化された素朴な形態が欠かせない要素となり、魅力的な世界を創り上げている。ミロ作品の重要な要素であるこの記号的な表現が生まれた背景としても、日本や東洋の芸術の影響は無視できないものがある。ミロの作品の持つ世界性や普遍性、そして根源性を理解する上で、日本や東洋芸術の影響は小さくないようだ。

 ミロは1966年初来日し、69年の再来日では、万博会場での壁画「無垢の笑い」を制作した。松田健児・慶応義塾大学准教授は、この時のミロの足取りを細かく追って、「訪日がミロの経歴にとって重要な転換点となった」(同展カタログ)と述べている。2度の来日でミロは精力的に日本文化に触れた。その影響は今回展示された、筆墨のかすれや滴りを思わせるモノクロームを基調にした作品にはっきりと表われている。

 副田一穂・愛知県美術館主任学芸員はカタログの論考で、「何度かの日本訪問は私の作品に影響を与えました。しかしモントロイグでのような感情だったとは言えません。なぜなら私は日本に深い根を持っていないからです」というミロがフランス人作家ジョルジュ・ライヤールのインタビューに答えた言葉を引いて、日本はミロにそれほど本質的な影響を与えはしなかったとしている。しかし、ミロの故郷のモントロイグと外国の日本を比べても詮無(せんな)いことのように思われる。

 ミロにとって日本芸術の影響はかなり本質的なものだった。もちろん、表現する内実にはカタロニア人ミロという一人の人間がおり、それは変わることはないけれども。

 同展には、草月流家元の勅使河原蒼風(てしがはらそうふう)、詩人の瀧口修造(たきぐちしゅうぞう)らとの深い交流の成果やアトリエに所蔵されていた日本の民芸品や刷毛(はけ)、日本関係の書籍なども展示されている。4月17日まで。

(特別編集委員・藤橋 進)

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