子宮頸がんワクチン「副反応」被害に懸念の声

NEWSクローズ・アップ

子宮頸(けい)がんの主な原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染を予防するワクチンをめぐり、昨年末、大きな動きがあった。今年4月1日から、HPVワクチン接種を個別に呼び掛ける「積極的勧奨」の再開が決まった。昨年10月から厚生労働省の審議会で議題に上げられ、厚労省は勧奨中止を約8年半ぶりに終了すると11月26日自治体へ通知した。積極的勧奨の再開に向けた課題を探った。(竹澤安李紗)

昨年12月23日に開催された厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会(竹澤安李紗撮影)
昨年12月23日に開催された厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会(竹澤安李紗撮影)

政府は丁寧な情報提供を
4月から「積極的勧奨」再開

「ワクチンの中身が同じまま再開したら被害が増えるだろう。再開するなら被害者をすべて健康に戻してから」

こう訴えるのは「全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会」の松藤美香代表。同会は2013年3月、接種後の体調不良を訴える女性や家族らで結成された。会員数620人(昨年11月時点)。これまで1万件以上の相談を受けてきた。11年10月に接種した松藤代表の長女は、当初よりは症状は改善したが、不随意運動や頭痛、身体の痛みなどが続いている。

子宮頸がんは、40歳までの女性のがん死亡第2位。国内では年間1・1万人以上がかかり、約2800人が死亡している(厚労省資料より)。発症まで数年~数十年の期間があり、5年相対生存率は76・5%と高い。HPVは主に性的接触によって男女を問わず感染するが、9割は自然に排除される。

子宮頸がんワクチン
子宮頸がんワクチン

接種可能な2種類のワクチン(サーバリックスとガーダシル)は、子宮頸がんの原因の50~70%を占める二つのタイプ(16型と18型)の感染を防ぐ。いずれも間隔をあけて計3回の接種が必要だ。

同ワクチンは13年4月、小学6年~高校1年女子を対象に定期接種化された。しかし、接種者から慢性的な痛みや運動障害などが報告され、同年6月積極的勧奨が差し控えられた経緯がある。松藤代表の長女は10年から始まった国の緊急促進事業で接種した。

積極的勧奨とは、自治体から各家庭に個別の案内と予診票などを送ることを指す。定期接種のままだったが、勧奨の中止により接種率は約10分の1以下に落ちた。今回、約8年半ぶりに再開する理由を厚労省健康局は「安全性と有効性が示され、接種後の支援や十分な情報提供が行われるようになった」と説明している。

現状での勧奨再開に反対する声がある中、千葉県内の家庭医(32)は「最新の論文を見れば、同ワクチンには予防効果が90%以上あり、副反応も少ない。安全性と有効性は十分に認められる」と接種を勧める。自身の妻も結婚前に接種したという。

被害を訴える人たちのほかにも、接種の勧奨に反対する声は少なくない。その理由の一つは、中高生の性行為を助長する恐れがあるというもの。これに対して、前述の医師は「短期的な戦略としてワクチンは有効だが、長期的に見ると『命の大切さや神秘性』を伝え、性を大切にする教育も重要」と語る。

HPVワクチンの「サーバリックス」(上)と「ガーダシル」
HPVワクチンの「サーバリックス」(上)と「ガーダシル」

4月から始まるのは積極的勧奨だけではない。公平な接種機会を確保する観点から、無料接種の機会を逃した世代を対象とした、いわゆる“キャッチアップ接種”も始まる。1997~2005年度生まれの女性は3年間、公費接種を受けることができ、その数は数百万人規模に上る。

厚労省は、HPVは主に性交渉で感染するため、年齢や性交渉の有無によりワクチンの有効性が低下することも合わせて周知する。このほか、不安材料として挙げられる副反応についても、接種後に症状が出た場合に診療相談できる窓口が全国にあることをアピールする。

審議会では医療的な支援について、協力医療機関を47都道府県に84カ所(21年4月1日現在)整備していると報告された。しかし、大阪府や千葉県をはじめ31府県内には1機関しかなく、「この数では十分ではない」と指摘する専門家もいる。

松藤代表は、指定病院を受診した際、指定されたことを知らなかった医師がいたなど、過去に不適切な対応をされた経験があり、不信感が拭えないと憤る。

海外の接種率は米国55%、英国82%、豪州80%(17年時点)。一方、日本は1%未満と圧倒的に低い。06年に欧州で生まれた同ワクチンについて、世界保健機関(WHO)は接種を推奨している。勧奨再開を訴えてきた日本産科婦人科学会はホームページで「このまま接種が進まなければ、世界の流れから日本が大きく取り残される懸念がある」と強調している。

コロナのパンデミックで多くの人がワクチンの必要性を認識するようになった。厚労省の決断の背景には、こうした社会の変化があったこともうかがえる。

キャッチアップ接種対象者の記者(竹澤)が取材して強く感じるのは、政府の方針を鵜呑(うの)みにせず、自ら科学的に判断することの大切さだ。

そのためにも、厚労省には12歳から25歳の女性たちが「自ら」判断できるように、丁寧な情報提供が求められる。

spot_img
Google Translate »