金沢市、「雪かき」で地域と心温まる交流

雪の多い金沢市では、除雪のため、大学生らによる「雪かきボランティア」が活動している。行政が仲介となって町会と学生をつなぎ、若い力を借りて除雪する取り組みだ。今年で16年目を迎える。この冬は、今のところ積雪は10㌢程度で、ボランティアの本格的な始動には至っていない。しかしながら、近々の天気予報を見ると、今週は軒並み雪マークが並び、彼らの力を借りる事態になりそうだ。(日下一彦)


大学生ボランティアが金沢市とタッグ、地域と協定交わす

天気予報で「JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)」を耳にすることが多くなった。大雪をもたらす雪雲のラインで、豪雨が続く「線状降水帯」の雪バージョンだ。富山市ではこの影響を受けて、この冬38㌢の積雪を観測し、地域全体がすっぽりと雪に埋まった。同じ北陸地方でも、金沢市と富山市で雪の降り方が異なるのは、JPCZメカニズムの違いによることが分かってきた。

金沢市、「雪かき」で地域と心温まる交流
2019年2月に金沢市内で「雪かきボランティア」で活動する女子学生

さて、大学生らによる雪かきは、「学生等雪かきボランティア事業」として、平成18年度から金沢市がスタートさせた。事業内容を見ると、大学生には部活動、サークル、ゼミなどの数人から十数人のグループ単位で登録してもらい、市が仲介して市内の各町会と組み合わせ、両者がそれぞれ「雪かきボランティア協定」を締結、高齢者ばかりで雪かきの“戦力”がいない所に手助けに行くというもの。

城下町の面影が色濃く残る金沢市の旧市街地は、狭い路地が迷路のように入り組んで、重機による除雪がしにくい地域。しかも、年配者の生活道路となっている道がほとんどで、高齢者が路地や玄関先などを除雪するには若い力の助けが必要になる。

富山市にも同様の「おらっちゃ雪かき隊」という除雪ボランティアがあるが、こちらは市民が中心。金沢市で大学生を中心にこうした活動ができるのは、他地域に比べて、大学の数が多いからだ。

昨年度は金沢大学、金沢星稜大学、北陸大学、北陸学院大学、金沢学院大学など6大学のゼミやサークルのほか、高校のスポーツ部も活動に参加した。今年度は、18の団体が地域と協定書を交わした。

保険料など市が負担、高齢者多い狭い路地裏で“戦力”に

金沢市、「雪かき」で地域と心温まる交流
2021年12月に行われた学生と町内会の代表による調印式の様子

ボランティアの期間は雪が積もる毎年12月から2月までの3カ月間で、地域から除雪作業の要請があった日に行う。市は仲介役のほか、学生への活動謝礼(交通費相当)の支払いや学生と地域との連絡・調整などを行うことになっている。スコップなど雪かきグッズの貸し出しも担当している。

作業方法は地元の町会役員らが指導する。作業中のケガなどに備え、学生はボランティア保険に加入し、その保険料は市が負担している。学生側が申請すれば「ボランティア証明書」も発行する。大学進学や就職の面接時のアピールポイントにもなる。

市内には1343の町会があり、各町会は小学校区ごとに62の校下(地区)町会連合会を組織し、中・広域的な地域活動を行っている。雪国育ちでなければ、雪かきは“まったくの素人”という学生も多く、「金沢に来て、こんな体験ができて良かった」と語る学生も少なくない。彼らにはウインタースポーツを楽しむこととは別の貴重な体験となっている。

学生と市民との交流も徐々に広がっている。これまでの活動の成果として、高齢者の多い路地裏では、「狭い道を除雪してもらい、とても歩きやすくなった。これで孫たちも安全に通学できます」との感謝の声が聞かれた。学生たちも「地域の人たちと仲良くなれてうれしかった」など、新たな交流も生まれている。夏祭りなどで人出が減った町会へ神輿(みこし)の担ぎ手として応援に出掛けるグループもあり、雪かき以外にも交流の輪が広がりつつある。

spot_img
Google Translate »