新型肺炎にデモ自粛せず 感染防止より安倍首相批判
改正新型インフルエンザ対策特別措置法が成立した。新型コロナウイルス対策でも同法で可能になる「緊急事態宣言」に反対している共産党の機関紙「しんぶん赤旗」は、「広範な人権への制約/徹底審議のうえ廃案を/志位委員長が会見」「首相“独断”に法的根拠与える危険」(3・13)などと批判した。
同法は共産党を除く与野党の一致で成立した。人から人への感染を防ぐには極力人が集まることを避け、感染が確認されたら隔離するしかない深刻さを賛成各党が理解したからだ。しかし共産党は、先行して呼び掛けられた学校の臨時休校やイベントの自粛にも安倍晋三首相の独断として非難した。
緊急事態宣言に反対「赤旗」
改正新型インフルエンザ対策特措法を賛成多数で可決、成立させた参院本会議=13日午後、国会内(時事)
同紙12日付「主張」では、「緊急事態宣言が出れば、憲法で保障された集会、表現、移動の自由や財産権などに大きな制約を課すことができるようになります」として法案内容に触れ、安倍首相に「緊急事態宣言を出す権限を与えることに国民の懸念や不安の声が広がっています。安倍首相の下で国民の人権制限を可能にする新型インフル特措法の改定を認めることはできません」と反対理由を述べている。要は,あくまで「反安倍」の政治目的最優先だ。
同紙11日付でも「権力者による乱用の危険重大」(2面)として、「緊急事態宣言が出されると、都道府県知事の権限で集会の自由や移動の自由をはじめ広範な人権制限が可能となります。…例えば、集会の自由に対する制限の場合、―感染症のまん延防止、国民生活・経済の混乱回避のため、必要のある時は多数の者が利用する施設の管理者に、催し物の開催の制限、停止、その他政令で定める措置を講ずるよう要請できる―というもの。乱用による集会の自由の侵害の危険に歯止めがありません」と断じている。
あたかも安倍首相が新型コロナウイルスに乗じて緊急事態宣言し、共産党のデモ・集会を禁止することを目的としていると言いたいかのようだ。
それとも同党や支持者は自らのデモ・集会で新型コロナウイルス感染はないと思っているのだろうか。学校の臨時休校やイベントの自粛・中止が相次ぐ中、新型インフルエンザ特別措置法改正案に反対するデモ・集会を同紙は報じている。
例えば同紙12日付は、法案が閣議決定された10日、京都市内で70人が繁華街をデモ行進し同市役所前で集会を行い、参加者が「一番の緊急事態は安倍さんが首相であることだ」などと発言したことを扱った。
また、14日付1面にも「コロナ対策を消費税5%に/全国で重税反対統一行動」の見出しで、「今年で51回目となる3・13重税反対全国統一行動が13日、全国各地で取り組まれ」たと、東京・新宿の約100人の集会などを報じている。
同党の主張は、政府の要請による休業休校に伴う給料の補償や消費税率引き下げなどだが、これは感染そのものを食い止めるものではない。
感染に対する各国の措置を見てほしいものだ。発生源の中国では1100万人の武漢市を封鎖、イタリアなど欧州各国は国境封鎖や移動制限、外出禁止などを断行している。米国ではトランプ大統領が発した国家非常事態宣言に、民主党で大統領予備選挙中のバイデン上院議員も理解を示し、感染者数の少ないフィリピンでも首都封鎖に踏み切るなど世界的な緊急事態だ。
たとえ感染対策でも安倍首相の呼び掛けで共産党がデモ・集会、政治行動を自粛しましたとなっては沽券(こけん)に関わるのだろうが、同日付写真を見ると高齢者が多い。新型肺炎にかかったらどう責任を取るのだろう。
編集委員 窪田 伸雄