一党制含めスターリン批判
日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」は、1917年のロシア革命(10月革命)から100年となる11月7日付で、「ロシア革命100年と社会主義を考える」と題する特集を4面~5面にわたり掲載した。
内容は、革命を指導しソ連を樹立したレーニンを評価し、後継者スターリンに「大量弾圧」「覇権主義」「民族弾圧」の批判を浴びせ、第2次大戦後の日本共産党の暴力路線もスターリンの「押し付け」であり、1991年のソ連共産党解散は歓迎、その他の中国、キューバなど現在までの社会主義諸国は「社会主義を目指す国」であり、マルクスが「資本論」で展望した社会主義・共産主義を実現した国はない―、という。
また、これら社会主義国の一党制に「スターリン型の政治体制が持ち込まれた」と批判。しかし、「日本では憲法で国民主権、基本的人権、議会制民主主義がうたわれ、社会に定着しています。日本における未来社会はこうした条件で出発しますから、一党制などは起こりえません。社会主義・共産主義の日本では、民主主義と自由の成果をはじめ、資本主義時代の価値ある成果のすべてが、受け継がれて、一層発展させられるでしょう」と、夢物語のように述べている。
共産主義が唱えるプロレタリア独裁が、労働者階級を「代表する」と標榜(ひょうぼう)する党(共産党)による一党独裁制の背景だ。欧州の社会主義政党のように、民主主義の複数政党制を肯定するなら、それと相容(い)れない共産主義と決別して解党した方がいい。
また、レーニン時代を「人類の歴史ではじめて資本主義から離脱して社会主義の道に踏み出そうという試み」が行われたと美化するが、同紙記事でも批判するスターリンの「大量弾圧」という途方もない粛清(大虐殺)は、プロレタリア独裁を実現するためレーニンから始まったのだ。
フランスで出版された共産主義研究書「共産主義黒書」(ステファヌ・クルトワ、ニコラ・ヴェルト著)は、「我々は特定の個人を相手に戦争をしているのではない。我々は階級としてのブルジョワジーを皆殺しにしているのだ」と、1924年出版の「ロシアの赤色テロル」(著者はロシアの歴史家、社会主義者だったセルゲイ・メリグノーフ)から、チェーカー(レーニンによって設置された秘密警察)長官だったラツィスの1918年11月1日の指令を引用している。
つまり、「最初からレーニンとその同志は、『階級戦争』の立場を明確にし、政治的・イデオロギー的敵、あるいは服従しない住民さえも敵と見なして扱い、容赦なく皆殺しにすべきだとした」(同書)。ロシア革命後のソ連だけでも同書は犠牲者2000万人と推計している。
日本共産党はロシア革命の5年後の1922年に国際共産党(コミンテルン)日本支部として発足し、戦後の暴力路線もいわば本社命令に支店が従ったようなものだ。これらは「階級闘争史観」で暴力革命を正当化する共産主義理論を実践した帰結で、今さら詭弁(きべん)を弄(ろう)して帳消しにできるものではない。
編集委員 窪田 伸雄