トップ国際台湾【連載】2026世界はどう動く(5) 台湾 中国の工作と政治戦激化

【連載】2026世界はどう動く(5) 台湾 中国の工作と政治戦激化

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1日、台北の台湾総統府で記者会見する頼清徳総統(総統府提供・時事)

 台湾は中国からの直接的な脅威だけでなく、野党主導での頼清徳・台湾総統への弾劾案など内政でもさまざまな混乱に直面している。今年11月には地方自治体の首長などを決める統一地方選挙も予定されており、2028年の総統選挙へ向けて各政党の勢力図を示す重要な指標とされている。選挙戦に向けて与野党間で攻防が激化しそうな1年だ。

 「中国の激しい軍事的野心に直面した台湾には時をうかがう時間はなく、内輪もめで消耗する時間は更にない」。中国からの度重なる硬軟織り交ぜた攻勢に、元日に発表された頼清徳・台湾総統の新年談話からは焦りが感じられた。

 中国の人民解放軍が12月29日から31日にかけて行った台湾を取り囲む大規模な軍事演習「正義使命―2025」では、台湾上陸を想定した訓練や実弾射撃などが実施された。

 中国は台湾に対し伝統的に、武力を行使せず政治家の発言やマスコミ等を利用した宣伝工作や武力での威嚇で、台湾の人々の心理的屈服を狙った「文攻武嚇(言葉で攻撃し、武力で脅す)」戦略を取ってきた。今回の演習もその一環だ。中国が台湾を取り囲む軍事演習は22年にナンシー・ペロシ米下院議長(当時)が訪台してから頻繁に行われるようになった。

 中国の軍事演習が行われた前日の28日、台湾最大野党の国民党から次の総統選で候補者となる可能性のある蒋万安・台北市長が中国上海市と台湾台北市の都市間フォーラムに出席し、台中関係の緊張緩和と平和を願った。中国の平和を強調しながら、翌日に軍事演習を行うという矛盾が目立つタイミングとなった。

 中国側は今回の軍事演習を行った理由として、米国が台湾への武器売却を承認したことをほのめかしている。台湾の専門家は25年末に行われた理由として、26年4月に米国のトランプ大統領が訪中予定であるため、会談のある26年に米国への不満を伝える演習を行いたくなかったのではないかと分析。台湾周辺での軍事演習は中国軍の戦闘力・練度を高めるもので「台湾が中国軍の侵攻を食い止めるための戦力を持っている限り続く」とした。

 中国が仮に武力で一時的に台湾統一を行ったとしても、その後、統治できるかどうかは疑問視されている。そのため、台湾人が中国に統一されても構わないという心理状態に誘導し、台湾を血を流さずに手に入れるのが中国にとって一番望ましい。中国は台湾にさまざまな浸透工作を仕掛けており、政治面でも中国の浸透が目立つようになってきている。複数の野党議員が事前に旅程を公表しないまま訪中したことも疑問視されている。

 昨年末、国民党の鄭麗文党首は台湾メディアからインタビューを受けた際に、「2026年前半に中国を訪れ、習近平中国国家主席に会いたい」と述べており、それが「非常に重大で戦略的な意義とシグナルを持つ」と語った。

 議会においては、国民党と第2野党の民衆党は「反独裁、反専制」「台湾の民主主義を守る」と掲げて頼総統に対し台湾史上初めての弾劾案を提出した。総統の弾劾手続きは議員全体の半数以上で提案でき、3分の2以上の決議があれば、憲法法廷で審理される。野党は議会で多数を占めるものの、3分の2以上ではないため否決される見通しだが、一連の動きで今年11月に行われる統一地方選挙に向けて有権者に与党に対する疑念や独裁のイメージを与えることを狙っていると考えられる。

 前回の22年の統一地方選挙では野党は民進党政権が「専制的だ」「失政続き」などとキャンペーンを張り、民進党は大敗することとなった。今年も選挙に向けてさまざまなキャンペーンを行うことが予想される。与野党の攻防が激化しそうな1年だ。

(宮沢玲衣)

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