
台湾軍は今月9日から18日まで、中国からの武力侵攻を見据えた定例軍事演習「漢光」を行った。前例のない規模にまで拡大され、期間は過去最長の10日間となった。台湾国防部(国防省)によると、今年の演習は中国軍による2027年の台湾侵攻を想定。民兵船や海警船などによる武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」に対処する演習も初めて行った。(宮沢玲衣)
深夜の台北。目を除く全身を迷彩服で覆い、手に銃を持った兵士たちが台北の地下鉄内に次々と入っていた。幹部らしき人物が「早く入れ! 入れ!」と兵士の背中を押しながら入る場面も見られた。
台湾は、中国から侵攻された際、空襲などを警戒し市内の地下に無数に張り巡らされた地下鉄を兵力輸送と都市防御の要や手段とする考えだ。軍は昨年に続き、事前のシナリオがない状態で各部隊が任務を遂行できるかどうか検証。期間中は台湾全土の陸海空軍兵士のほか、過去最多となる約2万2000人の予備役を動員した。
訓練の一部は民間でも行われた。市内のスーパーでは買い物客が誘導され地下室に避難する場面や乗客が空港から一時的に出られなくなる場面などもあった。
中国の習近平国家主席はたびたび、台湾は「中国の領土」と発言し、台湾統一へ硬軟織り交ぜた手法で圧力を強めている。また、27年が中国人民解放軍の創設100年、習氏の国家主席の3期目の最後の年となることから、米国はそれまでに中国が台湾侵攻の準備を整えると予想し警戒を強めている。
台湾人の男性が昨年3月、X(旧ツイッター)に投稿したある衛星画像が台湾社会を騒がせた。それは、中国内モンゴル自治区の砂漠に台北市内の総統府や行政府などが再現された写真だった。ほぼ実寸大に再現された台北の街で、台湾上陸作戦に向けて円滑に作戦を遂行できるように中国兵を訓練していることが予想される。
演習が終了した18日、頼氏は自身のSNSで兵士へのねぎらいの言葉を投稿。「自然災害や地政学的な影響を前に台湾が唯一できる選択は準備を強化することだ。また、国際社会と地域に対して現状の平和と安全を守るという明確な決意を示すことだ」とつづった。
中国国防省報道官は8日、台湾軍の演習に対し「どんな武器を使っても人民解放軍には抵抗できない」と牽制(けんせい)。台湾の軍事演習中も戦闘機などが台湾を周回するなど、台湾側をあおるような動きを見せた。
多くの台湾人は中国からの度重なる軍事的脅しには慣れ切っており、中国が台湾を取り囲む軍事演習を行っても平然と日常を過ごしてきた。しかし今回は、軍事演習が、これまでと違い、日常生活にまで及んだ。頼政権が感じる危機感を、民間人も共有することとなった。





