トップ国際台湾台湾、与野党のリコール合戦白熱化 中国利する議会運営に危機感

台湾、与野党のリコール合戦白熱化 中国利する議会運営に危機感

1月11日、台北市で行われた台湾第2野党・民衆党の大規模集会(時事)
台湾立法院(113議席=国会に相当)で野党勢力が過半数を占める「ねじれ状態」が続き、野党を利する法案が次々と通過し、与野党の対立が激化。2月以降、市民団体が与野党に分かれて立法委員(国会議員)の大規模なリコール(解職請求)運動を展開し、2026年の統一地方選、28年の総統選に向け、激しさを増している。(南海十三郎)

「中国共産党は台湾野党を買収して台湾を内部から崩壊させようとしている。中国のスパイを立法院から追い出し、クリーンな立法院を取り戻す」。2月3日、口火を切ったのは野党に不満を持つ市民団体の代表、半導体大手・聯華電子の創始者・曹興誠氏だ。

最大野党・国民党の立法委員19人のリコールを求める署名名簿を提出し、さらに12人を追加。最終的には3月6日、民進党支持者団体が総がかりで国民党の立法委員39人中31人の大量罷免を請求し、中央選挙委員会は受理し、第一段階は通過した。一方、国民党支持者は対抗して、民進党の立法委員38人のうち13人の罷免を請求したが、3人はリコールの条件がそろわず、却下。残り10人を審査中だ。

国民党の朱立倫党主席はリコール手続きの作業が甘かったことを党内から批判され、「党中央、地方支部を全力動員し、リコールの条件となる第一段階の署名活動に全力を注ぐ」と応戦中だ。

国民党にとってリコールは苦い経験がある。20年6月、野党・国民党の公認候補として挑んだ韓国瑜(かん・こくゆ)高雄市長(現立法院長)に対する罷免の賛否を問う住民投票が実施され、賛成票が90万票を超えてリコールが成立。台湾の市長がリコールで罷免されるのは初めてで親中路線を打ち出した韓氏の解職は国民党だけでなく、中国にも大打撃で、結局、総統選で大敗した。

台湾では罷免成立には第一段階では選挙区の有権者総数の1%以上の署名が必要。その後、有権者総数の1割以上の署名が必要で、認められると、住民投票で賛成票が反対票より多く、賛成票が選挙区の有権者総数の4分の1以上となれば罷免が成立する。順調にリコール手続きが進めば今年夏ごろにリコール投票が行われ、リコールが成立すれば秋には補選が行われる。少数与党の苦しい政権運営を迫られていた頼清徳政権にとっては6議席を上積みできれば起死回生の与野党議席数逆転のチャンス到来となり得る。

韓氏のリコールは成立したが、24年10月の国民党所属の謝国●(=木へんに梁)基隆市長のリコールは不成立だったこともあり、一筋縄では行かない。

立法院は与党・民進党が51議席、国民党52議席、第2野党の民衆党8議席、野党寄りの無所属2議席となっており、野党系議員62人で優勢。民衆党がキャスチングボートを握るが、24年9月、柯文哲党首(当時)が贈収賄事件で逮捕され、新党首に就任した黄国昌党主席は「与党支援者による弾圧に徹底抗戦する」と激しい抵抗活動をしている。

とくに台湾中部の台中市は与野党のリコール運動が白熱し、台風の目となりつつある。国民党が最重視しているのは、呉思瑤民進党幹事長、「太陽花(ひまわり)学生運動」(14年の立法院占拠事件)も行った呉沛憶民進党立法委員の女性議員2人。さらに台中市区の民進党所属の立法委員も罷免対象の重点となっている。

国民党所属の盧文端台中市長は26年の任期満了後、総統選へ出馬する意欲を示しており、頼清徳総統の有力な対抗馬になる可能性がある。民進党としては、その芽を摘むため、台中市区の国民党の立法委員6人を罷免対象に入れ、28年の総統選の前哨戦を有利に進めようとリコール運動を強化。

昨年8月まで台北駐日経済文化代表処の代表を務めていた謝長廷氏は15日、新刊書「善の循環」発表後、リコール問題について「善の循環ではなく、悪の循環で根本解決にはならないが、台湾の民主政治が新たな段階に進んでいることを意味している」と泥沼化を憂慮している。

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