トランプ政権が発足した。トランプ大統領は、国務長官にマルコ・ルビオ上院議員を、安全保障担当の大統領補佐官にマイク・ウォルツ下院議員など対中強硬派を相次いで起用しており、バイデン前政権と同じように中国へ厳しい姿勢で臨んでいくことは間違いない。
対中国がトランプ政権の最重要課題であることは間違いなく、ウクライナや中東で早期の終戦を目指している背景にもそれがあろう。
●いまだ見えてこないトランプ大統領の対台湾外交

一方、未だに関わり方がはっきりしないのが、台湾政策だ。トランプ大統領は台湾にどう関与していくのだろうか。
これについては、少なくとも2つの見方がある。1つは、バイデン政権ほど台湾を重視することはないという見方だ。トランプ大統領は選挙戦の時から、台湾は防衛費を増額するべきだ、半導体産業を米国から奪ったなどと発言している。
トランプ大統領は、防衛費を増額しないNATO同盟国はロシアによる脅威から守らないと発言するなど、同盟国のGDP比における防衛費が十分でないことに強い不満を抱いており、これを達成させる手段として、脅しとしてのトランプ関税を活用してくることが考えられる。
また、トランプ大統領は半導体分野でも関税の導入を示唆しているが、根底には関税という武器をフルに活用することで、諸外国が半導体分野で米国への投資・生産を拡大し、それによって雇用を生み出すなどして米国の半導体産業を復活させるとともに、半導体分野で他国に依存しない体制を作ることで米国の安全保障を強化する狙いがある。
こういった考えを強く持つトランプ大統領は、バイデン氏以上に台湾へ強い要求を提示していくことが考えられる。
●台湾支援は西太平洋覇権維持につながる
もう1つが、対中国という一環で台湾を重視するという見方だ。トランプ大統領はアメリカファーストを追求し、外国が持つ負担の米国への影響を最大限抑えようとするが、同時に中国との戦略的競争には是が非でも負けない姿勢に徹している。
トランプ大統領は、米国が諸外国に対する圧倒的な優位性を維持し、最も強い国家であることに拘りがあり、それを脅かそうとする存在として中国に厳しい立場を堅持する。
マルコ・ルビオ国務長官は、中国の海洋進出を抑える上で台湾防衛の重要性を訴えており、トランプ政権としてバイデン政権と同様、台湾への軍事支援を積極的に継続することが考えられる。
仮に、台湾が中国の支配下に置かれることになれば、中国はそこを軍事的最前線と位置付け、西太平洋へ軍事的圧力を強めてくることが考えられ、西太平洋で覇権を握ってきた米国にとっては脅威となる。
●トランプ政権も対台湾支援重視か
要は、我々が認識するべきは、トランプ政権がどれほど国益を広く解釈するかである。
国益を狭く解釈すれば、そもそも台湾の優先順位は低くなるが、広く解釈すれば台湾は対中国の一環となり、最重要課題となる。
しかし、筆者としては、トランプ政権は対中国という最重要課題に対応するにあたり、台湾をその中に落とし込め、バイデン政権のような台湾への軍事支援を継続するものと考える。
そして、同時にトランプ大統領は防衛費の増額や半導体分野での米国への投資、生産強化を台湾へ強く求めていくものと考える。
(この記事はオンライン版の寄稿であり、必ずしも本紙の論調と同じとは限りません)