トップ国際台湾社会に潜む内通者見分けよ 台湾野党は中国の代理人 総統府国策顧問 趙中正氏単独インタビュー

社会に潜む内通者見分けよ 台湾野党は中国の代理人 総統府国策顧問 趙中正氏単独インタビュー

就任演説をする台湾の頼清徳 総統=5月20日、台北市
台湾の頼清徳総統が5月20日に就任してから半年が経過した。総統府の国策顧問・趙中正氏は世界日報の単独インタビューに応じ、混乱する台湾議会や「国内に潜む内通者」に警戒する必要があると強調した。次期米トランプ政権についてはチャンスとする一方で、「中国に接近し過ぎている」との理由で石破茂政権を不安視した。(宮沢玲衣)

今年1月に台湾総統選挙と同時に行われた立法委員(国会議員に相当、定数113)選で、台湾与党の民進党は1議席差で少数与党となった。最大野党の国民党も過半数には届かず、第3党の民衆党がキャスチングボートを握る形となった。

民衆党は存在感を示すために政策に応じて民進、国民の両党とそれぞれ協力すると考えられていたが、実際は国民党に追従する動きばかりをしている。趙氏は「台湾人の誰もがここまで酷(ひど)くなるとは思っていなかった。完全に青(国民党)と白(民衆党)が一緒になってしまった」と台湾の内政を憂慮した。

台湾防衛および地域の安全保障の要となる潜水艦建造に関する予算への対応や、立法院の権限を拡大しようとした法案などからしても野党は中国を利する動きが目立つ。「台湾の野党は中国の代理人になってしまっている」と指摘した。

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厳しい情勢であるからこそ趙氏が頼総統に対してアドバイスするのであれば、「『国内の内通者』を見分け、区別していかないといけない」ことだと言う。台湾の半導体の技術は部分的に中国へ流出し、経済界や政界・芸能界・宗教界・教育界を含めどこにでも中国側の内通者が台湾にいると指摘した。

「公で語るのは難しくても、味方と反対する人々それぞれに対しはっきりとしたスタンスを取ることによって、台湾は右に左にブレないのだと台湾の人々や世界に示さなければいけない」。趙氏は、たとえ台湾人であっても「国益に繋(つな)がる政策に対し台湾の足を引っ張る人は内通者だ」という強い姿勢を示す必要があると強調した。

言葉の使い方にも注意が必要だという。「中国は『台湾統一』と曖昧な言葉でぼかすが、実際は『台湾侵略』だ」とし、使用する言葉でイメージを変えようとする中国戦略に注意が必要だと述べた。また、「『華僑』という言葉で、気付けば台湾人も中国人と括(くく)られるようになってしまった」ことを憂慮し、正しい表現で「われわれは『台僑(台湾人)』と主張し、自己防衛しないと世界は誤解してしまう」と危機感を募らせた。

「台湾問題は国際問題」であり、台湾が置かれている状況は厳しいが、民主主義と専制主義のせめぎ合いの第一線に位置し、その重要度が世界で認識されていることを趙氏は前向きに捉える。

欧州議会は10月24日、オーストラリアなどに続き、中国による台湾の領有権主張や軍事的挑発などを非難する決議を圧倒的多数の賛成で採択した。中国が台湾の国際組織参加の妨害などを行う理由の一つとして、「国連総会決議2758(アルバニア決議)」がある。この決議のもと、国連が共産党政権が率いる中華人民共和国を「中国」と認め、国連安保理常任理事国が中華民国(台湾)から中華人民共和国に移った。

欧州議会の決議は、アルバニア決議が中華人民共和国が台湾の主権を得るかどうかには言及していないにもかかわらず、中国が意図的にアルバニア決議を曲解し、台湾が中国に属するという誤った認識を拡散していると非難。加盟国に対し、台湾の国際組織への参加を支援するよう呼び掛けた。台湾外交部は欧州議会の採択に強い感謝を示した。

趙氏は「周りから発言してもらうだけでなく、積極的に台湾が世界に向けて自身の立場を発信しないといけない」と語った。

米要求の防衛費は「保険」

トランプ前米大統領の再選を趙氏は歓迎している。トランプ氏が台湾の防衛費増額を促す考えを示していることについて、米国は台湾にとって「保険会社」のような存在だと趙氏は指摘。「リスクに応じて『保険料』を払い、それと引き換えに『保障』を得るということだ」と語った。台湾野党は米国の考えを「ヤクザがみかじめ料を請求している」としているが、趙氏は「野党はわざと曲解している」と強く批判した。

トランプ次期政権では中国に対し妥協することなく厳しい態度を取る人物の要職起用が発表されている。趙氏は「米国が頼もしくなると捉えていいのではないか」と期待を寄せた。

経済面においては、トランプ氏は関税を引き上げることで、中国を米国市場から締め出そうとしている。カナダやメキシコに対しても、中国製品の経由地と見なし厳しい態度を示している。趙氏は、台湾の中国に近い金門・馬祖の離島を台湾野党が「経済特区」にしようとする動きを挙げ、「台湾が中国の関税対策のための経由地となって、米国の制裁対象となってはいけない」と警鐘を鳴らした。

一方、石破政権については「とても心配している」と語る。日本政府が重要視すべきは米国関係だが、最近の首相や閣僚の動向から「中国に接近し過ぎではないか」と疑念を抱く。1989年の天安門事件後に、世界が中国に制裁を下す中、中国市場に目を付けた日本が天皇陛下の中国訪問という形で外交を行い、中国への世界的な制裁がなし崩しになってしまった92年を彷彿(ほうふつ)とさせるという。「もし、あの時の制裁があと数年続けば、中国共産党に今のような力はなかったのではないだろうか」と語り、石破政権で同様のことが起こらないか懸念を示した。

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